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苦悩する英雄、壮大に 
「蒼き狼 地果て海尽きるまで」澤井信一郎監督に聞く
   東京朝刊 by 岡田敏一
澤井信一郎監督(撮影・岡田敏一)
ペルシャ湾から中国にいたる広大なモンゴル帝国を築き上げたチンギス・ハーンの生涯を描く超大作「蒼き狼 地果て海尽きるまで」(澤井信一郎監督)が3日から公開される。「特殊撮影に頼らず、映画館の大スクリーンで見るために作られた作品です」と、大ベテランの澤井監督がこう語る作品だけに、映画人の意地やこだわりが感じられる作品に仕上がった。

昨年のモンゴル帝国建国800周年を機に企画された日本とモンゴルの合作。原作は森村誠一の小説『地果て海尽きるまで 小説チンギス汗』。製作総指揮の角川春樹の「テレビ局主導ではなく、映画人主導の映画を作りたい」という希望のもと、製作費30億円を投入してモンゴルロケを4カ月にわたって敢行。モンゴル軍兵士約5000人、市民約2万7000人も動員するなど邦画としては空前のスケールで撮影された。

澤井は「普通の映画は叙情詩ですが、この作品は壮大な叙事詩であり、女性の目を通したチンギス・ハーン像を描いているのが特徴です」と話す。戦争で男は英雄となるが、女性の目を通せば「本当に英雄かどうかを問いかけたかった」という意図もあった。

実際、ハーンの成功物語というより、テムジン(後のハーン=反町隆史)と妻のボルテ(菊川怜)、息子のジュチ(松山ケンイチ)らの愛憎劇を中心にすえた人間ドラマとなっている。

映画「蒼き狼 地果て海尽きるまで」
映画「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

テムジンの母ホエルン(若村麻由美)は部族間の争いで敵のイェスゲイ(保阪尚希)に略奪されてテムジンを生んだ。父イェスゲイとともに花嫁探しに出たテムジンは別部族のボルテと結婚するが、ホエルンの元夫はホエルンを奪われた仕返しにボルテを略奪する。テムジンはボルテを取り返すが、その半月後、ジュチが生まれる…。

「ジュチが本当に自分の息子なのか? イェスゲイが本当の自分の父親なのか? テムジンは苦悩します。戦争スペクタクルにこうした細かい人間ドラマを組み込んであるのが見どころですね」と澤井。

とはいえ、膨大なエキストラを使った戦闘場面はすさまじい。「特殊撮影には極力頼りませんでした。特殊撮影が前面に押し出される今のハリウッド映画はフィルムの感触を良く知るわれわれにとってはうそっぽいんです」ときっぱり。

邦画ブームに沸くが、映画館のスクリーンで見なければ良さが分からない作品なんて皆無では? 「全くその通り。題材もスケールの小さいものばかりだしね」

澤井といえば、「トラック野郎」シリーズ全10作のうち5本で脚本や助監督を務めたことで知られる。「リメークしたら大ヒット? 僕もそう思うけど映画会社はビビって作れないよ。あのシリーズは企画自体が反社会的だから。実際、僕も警察の世話になったんだ。若い世代にぜひ撮ってもらいたいね、映画化されていない脚本が2本あるから」と笑った。

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