吉本ばななの同名小説を映画化した「アルゼンチンババア」(長尾直樹監督、24日公開)。町外れの洋館に住む正体不明の怪しい女性「アルゼンチンババア」を演じるのは、何と鈴木京香。「魔術師のような奇妙な外見と、自然の中で愛情あふれる生き方を貫いてきた温かい内面とのギャップをうまく演じ分けるのに苦労しました」と話す。
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アルゼンチンババアを演じた鈴木京香(撮影・岡田敏一) |
母が亡くなったその日に、父(役所広司)が失踪する。途方に暮れる高校生のみつこ(堀北真希)。半年後、父は見つかるが、何と父は町の外れにある廃虚のような屋敷に住む謎の女性、アルゼンチンババア(鈴木)と恋に落ちていた。
父の目を覚まさせようと、気のいい町の人たちとともに奮闘するみつこだが、ババアの屋敷に恐る恐る足を踏み入れると、そこは説明がつかない心地よさと、幸せな空気に満ちあふれていたのだった…。
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正体不明の奇妙な外見の女性アルゼンチンババアを演じた鈴木京香 |
鈴木の若さや美貌(びぼう)は、原作からイメージされるババアとどうも結びつかない気もするが、当人いわく「原作本は好きで読んでいたので、私にこの役をくださったということがうれしかった」と明かす。
とはいえ、演じるに当たって苦労も多かった。「単なる読者ではなく、演じる立場で読むと難しい役柄であると理解できました。外見が奇妙だからといって内面や本質を見誤ると損をする女性。インパクトが強い外見の印象は伝えやすいですが、内面の優しさや愛情をどう伝えるかでけっこう大変でしたよ」と撮影を振り返る。
「外見や雰囲気を決めるまで、かなり努力したし、自然と一体化した生き方を提示するのが難しかった。実際、彼女の良さをすべて出せたかどうかは自信がないですが、アルゼンチンからたった1人で日本にやってきて、ひとり暮らしを続けている彼女の人物像は表現できたと思います」
そんな試行錯誤の甲斐あってか、「映画は、原作が持つやさしい世界観をうまく描くなど、原作ならではの良さを残している所に好感が持てました」と満足そうだ。
単身アルゼンチンを訪れ、本場のタンゴに触れたり、日系人であるババアにリアリティーを持たせるため、せりふ回しに独特のイントネーションをつけたりもした。
先日まで放送されていた人気ドラマ「華麗なる一族」(TBS系)でも財閥の長の執事兼愛人という難しい役柄に挑んだ。「イメージを限定したくないので、変わった役柄が来たときは喜びを感じます。もろ手を挙げてウエルカムって感じです。これからは名作『サンセット大通り』(ビリー・ワイルダー監督、1950年)のように、女優が女優の役を演じるという試みに挑みたいですね」と笑った。