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「スイミング・プール」の女優、サニエが挑む
映画「情痴 アヴァンチュール」昼と夜、別人格の女
  東京朝刊 by 岡田敏一
31日公開のフランス映画「情痴 アヴァンチュール」(グザヴィエ・ジャノリ監督)は、フランスを代表する若手女優リュディヴィーヌ・サニエが猟奇犯罪の鍵を握る夢遊病患者を演じる官能的なサスペンス。官能ミステリー「スイミング・プール」(2003年)で日本でもファンを増やしたサニエだが、本作でも、精神状態を不安定にするため眠らないようにするなど、ハードな役づくりに挑んだ。

映画「情痴 アヴァンチュール」
映画「情痴 アヴァンチュール」

ファッション業界で働くセシル(フロランス・ロワレ=カイユ)と、映像関係の仕事に就くジュリアン(ニコラ・デュヴォシェル)の若いカップルは、パリのアパートに引っ越してきたばかり。楽しい生活が始まるはずだったが、ある晩、ジュリアンはアパートの入り口で裸足でうつろな目の若い女性ガブリエル(サニエ)を見つける。

別の日、子供と一緒に買い物するガブリエルを見つけ、あとをつけると彼女は向かいのアパートに住んでいた。しかし彼女は自分で手首を傷付けベッドで気を失っていた。彼女は夢遊病者だったのだ。彼女と親しくなったジュリアンは、彼女から恋人ルイ(ブリュノ・トデスキーニ)の尾行を依頼される…。

カトリーヌ・ドヌーヴら大ベテランと共演した「8人の女たち」(02年)でも強烈な存在感を誇示したサニエだけに、役作りには並々ならぬ力を注いだ。「本物の患者との接触は病院に拒否されたので、夢遊病患者の発作などを紹介した英BBCのドキュメンタリーを見たり、精神科医への取材で基本的な役づくりを行いました」

さらに、あえて眠らないことで不安定な精神状態に追い込み、自分で自分をコントロールできないという夢遊病患者に近い状況にした。「それでも昼と夜で別人格を演じねばならないのは挑戦でした。1つの映画で2人の人物を演じ分けるのですから…」と振り返る。

「ピーターパン」(03年)でティンカー・ベル役に抜擢(ばってき)され、ハリウッドデビューを果たした。とはいえ、フランス映画を愛する自らのスタンスは明確だ。「ハリウッドの娯楽大作は不可能を可能にするけれど、すぐに物事を善悪の2種類に分けてしまう。しかし約6000万人の国民だけを相手にするフランス映画の大命題はリアリティーの追求であり、そんな職人的な作品に取り組める特権を有しているんです」と誇らしげに語る。

社会に向ける目も冷静でシビアだ。「最近、夢や悪夢を取り上げた映画が多いのは、人間とメディア、テクノロジーとの関係が驚異的な速度で変化しているからよ。ネット社会の進展で世界は密接結び付き、我々はあらゆるものを所有したように振舞っているけれど、それはあくまで仮想現実の世界で実際は何も所有していない。まさに夢であり悪夢だわ」。27歳とは思えない落ち着きと自信に満ちた態度。大物になるのは間違いだろう。

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