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前作までのブランド力、利用
今年の“続編”公開、最多の17本
  東京朝刊 by 岡田敏一
映画業界にとって書き入れ時のひとつ、ゴールデンウイークが始まったが、今期公開のハリウッド大作の多くは、「ロッキー」など大ヒットシリーズの続編だ。この期間だけの傾向ではなく、今年は公開される続編がここ数年で最多の数となりそう。作品を売り込む日本の配給会社は、「続編は人気レストランの定番料理のようなもの」と語る。ヒット作の“ブランド力”を有効に使うビジネス戦略が、続編ラッシュを生んでいるようだが…。

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」はシリーズ5作目となる((C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing Rights (C)J.K.R.)
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」はシリーズ5作目となる((C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing Rights (C)J.K.R.)

下記のように、今年公開予定の人気作の続編は17本。平成16〜18年はいずれも6本で、「マトリックス」の2、3作目が連続公開され「続編の当たり年」といわれた15年より5本も多い。さらに米で10月公開の「ソウ4」など、年内公開の可能性がある作品が数本あるとみられる。今年の続編公開数は突出している。

続編頼みが加速する背景には、年々高騰する製作費がある。1日公開の「スパイダーマン3」に投入された製作費は、ハリウッド史上最高の約3億ドル(約360億円)。もちろんそれでも元が取れると計算しているわけだが、過去の全作品の全世界における興行収入ランキングの169位と同額(1位は「タイタニック」の約18億ドル)。邦画では「千と千尋の神隠し」が記録した史上最高額304億円を上回る。どれぐらい巨額かわかるだろうか。

「スパイダーマン3」の日本配給元であるソニー・ピクチャーズエンタテインメントは「年々製作費が高騰しており、失敗が許されないという過酷さに拍車がかかっている」とハリウッドの現状を分析する。続編の“魅力”については「ヒット作は知名度が高くゼロから宣伝する必要がない。そのうえ、手堅く稼いでさらなる続編も狙えるという非常に効率の良いビジネスモデル。人はブランド力に弱いですからね」と話す。

17年ぶりのシリーズ第6弾「ロッキー・ザ・ファイナル」を日本で配給している20世紀フォックス映画は「たまたま続編が重なったということも考えられるが、知名度やブランド力が高く、確実に稼げる大ヒットの続編は売る立場のわれわれとしても非常に魅力的」と好意的に受け止めているようだ。

とはいえ、続編が必ず大ヒットするとはかぎらない。「ロッキー」は昨年末に米国で公開されたが、興行収入は約7000万ドル(約82億円)と、大ヒットの目安である1億ドルを割り込んだ。フォックスは「日本ではロッキーに熱中した団塊世代にアピールすると同時に、当時を知らない若い世代にもPRするなど独自のプロモーション活動が不可欠」と話す。知名度やブランド力だけで大もうけできるほど甘くはない。

続編ラッシュに厳しい視線を向ける関係者もいる。米のエンターテインメント市場に詳しいソニー・ピクチャーズの執行役員で、アニメ専門のCSチャンネル「アニマックス」の滝山雅夫社長は「ハリウッド映画の企画が行きづまっている証拠。米国文化が世界に与える影響力が弱まっている」と指摘している。

安易に続編に頼るのは考えものだが、「スター・ウォーズ」や「マトリックス」のように、重厚で壮大な物語を織りなすものもある。映画ファンとしては、続編だからこそ面白い、という作品を期待したい。

2007年のハリウッド続編映画
◆4、5月公開
 スパイダーマン3
 ハンニバル・ライジング
 ロッキー・ザ・ファイナル
 パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド

◆6月
 シュレック3

◆7月
 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

◆8月
 オーシャンズ13

◆9月
 ファンタスティック・フォー:銀河の危機

◆12月
 ナショナル・トレジャー2

◆公開日未定の作品
 ダイ・ハード4.0
 Taxi4
 呪怨 パンデミック
 バイオハザード3
 ボーン・アルティメイタム
 エバン・オールマイティ
 ラッシュアワー3
 Mr.ビーンズ・ホリディ(原題)

◆公開の可能性がある作品
 ソウ4

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