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「体験者として、反戦の気持ちで参加」
「俺は、君のためにこそ死ににいく」岸惠子に聞く 
  東京朝刊 by 岡田敏一
太平洋戦争末期に“特攻の母”として慕われた鳥濱トメさんの視点で若き特攻隊員らの生き方を描く「俺は、君のためにこそ死ににいく」(12日公開)は、トメさんを演じたベテラン、岸惠子の存在感が光る青春群像劇だ。岸は「戦争で尊い命が失われるようなことは二度とあってはならない。若い人にはもっと歴史を学んでほしい」などと作品への思いを語った。

女優の岸恵子さん(撮影・大山文兄)
女優の岸恵子さん(撮影・大山文兄)

米軍が沖縄に上陸した昭和20年春、鹿児島県の知覧飛行場(川辺郡知覧町)は本土防衛を迫られた日本軍の特攻基地となり、ここから終戦までに439人の若者が飛び立った。

物語は、陸軍士官学校を卒業した生え抜きの陸軍少尉、中西(徳重聡)や、出撃と帰還を繰り返し周囲の非難を浴びる田端少尉(筒井道隆)らのドラマを軸に展開する。そんな彼らを見守ったのが、軍指定の食堂を構えていた鳥濱トメ(岸惠子)。特攻隊員らとの切ない別れを繰り返す。

岸のもとには、製作総指揮と脚本を手がけた石原慎太郎・東京都知事から約2年前に映画出演の話が来たというが、ちょっとした葛藤(かっとう)があったそうだ。

「最初にいただいた脚本では、全体に戦争を美化している感じがしました。それは嫌だったので、思いを伝え、脚本を3、4回書き直してもらいました。最終稿を見て出演を決めました」

出演に際しても、“反戦”の思いは譲れなかったようだ。

「戦争に憤りや悲しみを持っていたトメさんを真心込めて演じることで、戦争が人を狂わせ、国を荒廃させるということを訴えたかった。あの戦争を体験した者として、心から戦争に反対したいという気持ちで参加しました」

印象に残っているのは「特攻隊員のためにトメさんが憲兵に詰め寄る場面」だという。「やさしいだけではなく、時代に流されない芯(しん)の強い女性であるトメさんを端的に表現しています。その強さを自分に重ねあわせて、トメさんを演じようという気になった」と振り返る。

「良い戦争なんてこの世にあるわけがない。過去をひもとかない国に未来はない。美学や国家の体裁で尊い命が失われることが二度とあってはならないと思います」と訴える岸。

「あの戦争はたかだか60年前のことなのですから、若い人には歴史を学んでほしいですね。最近は『日本はどこの国と戦ったの?』と真顔で尋ねる人までいるそうです。同時に(この作品を見て)命の大切さも感じてほしい」

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