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ゴンドリー監督の奇才ぶりをも堪能
「恋愛睡眠のすすめ」ロマンチックに現実逃避
  東京朝刊 by 岡田敏一
現実逃避というとネガティブで卑屈なイメージが漂うが、こんな逃避なら健全で楽しいな、と笑ってしまった。仏伊合作映画「恋愛睡眠のすすめ」(公開中)は、主人公の脳内がテレビ局となっていて、彼の夢(妄想)の顛末(てんまつ)がニュース形式で伝えられるというユニークな作品。嫌なことがあれば爆睡すればいい。脳内世界では決してフラれることもないし、仕事も大成功で…。

映画「恋愛睡眠のすすめ」
映画「恋愛睡眠のすすめ」

監督は、失恋の記憶を消去する恋人同士の悲しい物語「エターナル・サンシャイン」(04年)で知られるミシェル・ゴンドリー。

斬新(ざんしん)な展開でハリウッドを注目させた「エターナル−」にしゃれたユーモアの要素を加味したのが「恋愛睡眠−」といえるが、ゴンドリー監督は「記憶や夢といった人間の内面にとても興味があるんだ。だから頭の中を旅する作品を描いてみたかった」と笑う。

仕事も恋愛もうまくいかない内気な主人公、ステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、メキシコからパリに引っ越してきたが、カレンダーの製版係という意に沿わぬ仕事に悶々(もんもん)としている。隣人のステファニー(シャルロット・ゲンズブール)に恋するが、彼女はなかなか振り向いてくれない。

それも夢の中ではすべて自分の思い通りなのだが、次第に夢と現実が混乱し始め、ステファンのネガティブ思考が炸裂(さくれつ)。ステファニーの示してくれる好意にも疑心暗鬼になり、物事の歯車が狂いだす。

ステファンの夢(脳内妄想)を彼自身がリポートする「ステファンTV」のセットや、巨大なぬいぐるみのような馬、段ボール製の自動車など、小学生の夏休みの宿題のような安っぽい小道具がかわいい。1秒だけ過去と未来に行ける「1秒タイムマシン」といったステファンの奇妙な発明にも笑える。

奇才ぶりを遺憾なく発揮するゴンドリー監督は「現代社会で最も重要な問題であるコミュニケーション欠如のことも訴えているんだよ」。

マンガチックでロマンチック。ラストシーンは切なく哀(かな)しい。

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