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ウィル・フェレルが好演
「主人公は僕だった」運命に負けたくない
  東京朝刊 by 岡田敏一
見知らぬ小説家が執筆中のストーリーが、自分の日常生活を操っているとしたら? そのうえその結末で自分が死ぬと分かったら…。そんな不思議なハリウッド映画「主人公は僕だった」(19日公開)は、人間ドラマの名手として知られるマーク・フォースター監督が「人間の運命は変えられるのか」というテーマに挑んだ意欲作だ。ちょっとばかり人生につまずいたり疲れたりしている人に、ぜひ見てもらいたい。

主人公ハロルドを演じるウィル・フェレル。お笑い出身とは思えない寡黙でシリアスな演技で新境地を開拓している
主人公ハロルドを演じるウィル・フェレル。お笑い出身とは思えない寡黙でシリアスな演技で新境地を開拓している

国税庁の職員として生真面目で退屈な独身生活を送るハロルド(ウィル・フェレル)に、ある日突然、どこからともなく女性の声が聞こえてくる。そしてその声は、自身の行動を同時進行でナレーションのように解説し始めるのだった。

薄気味悪くなるハロルドだが、何とその声は、彼が近々、命を落とすと宣言する。声の主は誰で、目的は何なのか? 相談を受けた大学教授のジュールズ(ダスティン・ホフマン)はハロルドの運命を別人が操っていると推理。「悲劇は死で、喜劇は結婚で終わる」などと助言し、ハッピーエンドが迎えられるよう策を練る。

小説のストーリーがいやおうなく進む中で、ハロルドは自分が本当にやりたいことを探し始め、税金を滞納していたケーキ屋の経営者アナ(マギー・ギレンホール)と恋に落ちる。しかし、ふとしたことからストーリーの執筆者が誰なのかを知る。それは、どんな小説でも最後に必ず主人公を殺すことで有名な悲劇作家、カレン(エマ・トンプソン)だった…。

ハル・ベリーがアカデミー賞の主演女優賞を獲得した「チョコレート」(2001年)や、「ピーターパン」の作者J・M・バリーを描いた「ネバーランド」(04年)で深く感動的な人間ドラマを紡いできたフォースター監督。本作は「一旦読んだら内容が頭から離れなくなった」というほど気に入った脚本だった。

プロデューサーのリンゼイ・ドーランも、新進の脚本家ザック・ヘルムが手がけたこの脚本をうまく映像化できるのはフォースター監督以外にないと考えていたらしい。

主人公を演じるフェレルはもともと米で人気のコメディアンだったが、最近は映画俳優として進境著しい。本作でも「彼ならどこにでもいる普通の人間を演じられる。新たな挑戦をしてもらいたかった」と語る監督の狙い通り、内省的で寡黙なハロルドを巧みに演じている。

監督は、他の出演者の演技にも満足そうだ。「思いを内に秘めるハロルドとは逆に、聡明で率直なアナを演じたギレンホールも良かった。ホフマンは大学教授のイメージにぴったりだろ?」

とっぴな物語だが、監督が本作を通じて語りかけるテーマは普遍的だ。

「人間の運命は決められたものなのか? それとも自身で変えられるのか?」

きっと少しだけ元気になれる。

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