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「60年」ネコ描写 
NY日系人ホームレス画家の「軌跡」映画化
5月19日(土)   東京朝刊
【ニューヨーク=長戸雅子】ニューヨークの路上で、ネコの絵を描き続けてきた高齢の日系人ホームレス画家、ジミー・ツトム・ミリキタニ氏(87)。同氏の戦後60年の軌跡と彼に起こった“奇跡”を描き、全米で感動を広げているドキュメンタリー映画「ミリキタニの猫」がこの夏日本でも劇場公開(東京、ユーロスペースなど)される。リンダ・ハッテンドーフ監督(女性)は「彼は何事も遅すぎることはない、ということを示す実例だ」と話している。

監督がミリキタニ氏と初めて会ったのは2001年1月。氏は監督が住んでいたニューヨーク・マンハッタンの家の近くの路上でネコの絵を描き続けていた。

互いにネコ好きだったことから言葉を交わすようになり、高齢の日系人ホームレスという存在にショックを受けた監督は社会派ドキュメンタリーの制作を思いつく。

同年9月11日、米中枢同時テロが起き、現場から1マイルしか離れていない氏の「路上アトリエ」周辺はガスと粉塵(ふんじん)にまみれた。監督は氏を自宅に連れてきて同居させた。一緒に住むことで、監督は戦争に翻弄(ほんろう)された氏の過去を知り、彼の人生そのものにカメラを向けていく。

米カリフォルニア州で生まれた氏は少年時代に母方の故郷の広島県に戻り、墨絵を習った。17歳だった1937年に米国に戻ったが、日米開戦で同州の強制収容所に送られた。さらに、家族のほとんどを原爆で失った。その間「敵国人」として米市民権を剥脱(はくだつ)され、さまざまな職業を経て路上生活を送ることになった。

「広島の原爆」「強制収容所」「ネコ」が氏の絵のモチーフだ。ネコを描きはじめたのは収容所にいた少年から「兄ちゃん、ネコの絵を描いて」と頼まれたのがきっかけ。少年はこの直後死亡し、収容所周辺の砂漠に埋葬されたという。

ニューヨークの福祉アパートに住み、昨年、シアトルで個展も開いたミリキタニ氏と、図らずも人生の“奇跡”を引き出す役割を担った監督は「祖父と孫娘」として交流を続けている。

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