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片岡孝太郎らも出演
「Beauty−美しきもの−」村歌舞伎の魅力発信
    東京朝刊 by 生田誠
村歌舞伎を愛し、守り続ける若者を描いた映画「Beauty−美しきもの−」(後藤俊夫監督)がこのほどクランクアップした。地方に伝わる伝統芸能の魅力を発信する試み。長野県伊那地方の自治体や歌舞伎保存会などが全面的にバックアップして作り上げた作品だが、趣旨に賛同した片岡孝太郎らも協力し、“本物”の歌舞伎役者が村歌舞伎の舞台に立つという珍しいシーンも実現した。

長野県大鹿村の大磧神社で行われた村歌舞伎の撮影には、観客役のボランティアが大勢集まった(taka koike撮影)
長野県大鹿村の大磧神社で行われた村歌舞伎の撮影には、観客役のボランティアが大勢集まった(taka koike撮影)

長野県南部には、大鹿(おおしか)歌舞伎(大鹿村)など、地域の農民が伝えてきた村歌舞伎が多数残っている。映画では、太平洋戦争前後の伊那地方を舞台に、村歌舞伎を継承する若者たちの成長や苦悩が描かれる。

ハイライトとなる出征前の村歌舞伎の場面は、今月12日に、古い歌舞伎舞台のある大鹿村の大磧(だいせき)神社で撮影された。近隣の町や村から参加した約300人のエキストラを前に、主演の片岡孝太郎は「大鹿歌舞伎になるべく似るように頑張りました」。

地方に伝わる古い歌舞伎に若い歌舞伎俳優は大いに刺激を受けた様子。片岡愛之助は「人々の熱気が伝わり、演劇の原点を見た感じ。ここだけの『六千両』を演じましたが、いつか普段の歌舞伎でも出せる日が来るかもしれませんね」と語った。

映画「マタギ」で知られる後藤監督は長野県出身。現在も飯島町に住み、早くから村歌舞伎を題材にした映画を構想し、地元でエピソードを探し集めてきた。

「たまたまお会いした(角川グループの)角川歴彦(つぐひこ)さんらの協力で、映画製作が実現した。私がシナリオを書き、主役は歌舞伎役者の方をと思っていたが、孝太郎さん、愛之助さんが出てくれることになって…」と後藤監督。孝太郎の父である片岡仁左衛門も村人役で出演している。

シベリアのシーンを含めて、撮影はすべて長野県内で行われた。普段は静かな大鹿村も映画のロケで一気に活気づいた。「オーディションで選ばれた子役を始め、エキストラはのべ2000人。皆勤賞で8回も参加した方もいます。スタッフにもボランティアが大勢います」と大鹿村教育委員会の菅沼佐知子さん。地元で結成された映画の支援団体の会員は約200人に達し、制作費(約2億円)の4分の1(約5000万円)が地元から集められた。

「忘れ去られたものを取り戻したかった。歌舞伎を題材に、美しい四季の自然を背景にした映画を作れば、地元が元気になる。歌舞伎は世界に知られるようになったが、外国の人は村歌舞伎のことは知らない」と後藤監督。映画の公開日などは未定だが、海外の映画祭に出すことも視野に入れながら、村歌舞伎の魅力を世界に発信したいという。

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【用語解説】大鹿歌舞伎
おおしかかぶき 農村や漁村に伝えられた地芝居(村歌舞伎)のひとつで、大鹿村では、江戸中期の明和4(1767)年に上演された記録がある。「六千両後日之文章」などここだけに伝わる演目が残り、平成8年に国選択無形民俗文化財に指定された。現在は、春(5月)に大磧神社、秋(10月)に市場神社の舞台で公演があり、観光客も多数訪れる。










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