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「象の背中」「アフター・ウェディング」 
余命を知った男、日欧2作品
2007/10/18 産経新聞    東京朝刊 by 松本明子
命が終わる日を知ってしまったとき、人は残された日々をどのように生きるのだろうか。くしくも、同じテーマの作品が日本とデンマークで製作され、27日から公開される。邦画「象の背中」(井坂聡監督)と洋画「アフター・ウェディング」(スサンネ・ビア監督)。いずれも、余命を知った中年男性の主人公の生き方を切実に描いている。

「象の背中」のワンシーン。余命半年の中年男を演じる役所広司(上)と「アフター・ウェディング」で実業家を演じるロルフ・ラッセゴード
「象の背中」のワンシーン。余命半年の中年男を演じる役所広司(上)と「アフター・ウェディング」で実業家を演じるロルフ・ラッセゴード

秋元康原作の「象−」は、不動産会社の営業部長である48歳の藤山幸弘(役所広司)が末期の肺がんを告知されるところから始まる。妻(今井美樹)と高校生の長女(南沢奈央)には隠し通し、大学生の長男(塩谷瞬)と愛人(井川遥)には事実を告げることを決めた幸弘。彼が選択した「半年」の過ごし方は、これまでの人生でかかわった何人かの人物に再会し、自分なりの「遺書」を手渡すことだった…。

重いテーマでありながら、物語は淡々と進み、その背景として家族の在り方、周囲の人たちとの絆(きずな)の深さなどの人間ドラマが浮き彫りにされていく。減量までして役作りしたという役所の迫真の演技も見ものだ。

一方の「アフター−」も、余命いくばくもない同世代男性の話。実業家、ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)は、インドで財政難の孤児院を運営するヤコブ(マッツ・ミケルセン)に巨額の寄付金を申し出る。条件はただ1つ、直接会って話をすること。

故郷へ帰ったヤコブは、かつての恋人で今はヨルゲンの妻となっているヘレネと再会。夫妻の娘、アナの結婚式に出席するが、アナはヨルゲンの実の娘ではなかった。実は、ヨルゲンは病に冒され残された時間がないことを知っていたのだ。ヤコブを呼び寄せた彼の意図、望みは何だったのだろうか。

この映画は、今年のアカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた作品。女性監督であるビアは自作の「しあわせな孤独」と「ある愛の風景」の2本がハリウッドでのリメークも決まっている。女性ならではの繊細で美しい映像が印象的だ。

ビア監督は「私はささやかな日常が、突然思いもよらない運命や事件によって変わってしまうこと、その劇的な変化にどのように対処するかに常に興味を持っている。私の狙いは現実を認識しつつそこに希望を見いだすこと」と話している。

人を愛する心。その裏に潜む孤独。そして、家族の大切さの本当の意味を知る両作品。映画の字幕を担当した渡辺芳子は「国や時代を問わず、普遍的なテーマであることに変わりはない」と語る。

「象−」は全国の松竹系で、「アフターー」は東京・シネカノン有楽町1丁目で公開される。

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