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組織の中の苦悩を熱演
映画「犯人に告ぐ」 主演、豊川悦司に聞く
2007/10/26 産経新聞    東京朝刊 by 岡田敏一
連続児童殺害事件の捜査でテレビ出演を命じられ、番組を通じて犯人と対決することになった刑事の葛藤(かっとう)を描く「犯人に告ぐ」(瀧本智行監督、27日公開)。暗い過去を引きずる主人公の刑事を豊川悦司が好演する。「権力争いや策略の渦巻く組織の中で苦悩する人間のドラマをうまく演じられた」と振り返る。

豊川悦司が暗い過去を引きずる刑事を好演する「犯人に告ぐ」
豊川悦司が暗い過去を引きずる刑事を好演する「犯人に告ぐ」

神奈川県川崎市で発生した連続児童殺害事件。犯人は自らを「BADMAN」と名乗り、テレビの女性ニュースキャスター(井川遥)に脅迫状を送りつけるなど、警察やメディアを翻弄(ほんろう)し続けるが、3件目の犯行後、沈黙する。

神奈川県警は膠着(こうちゃく)状態を打開するため、捜査の責任者である巻島刑事(豊川)を報道番組に出演させ、犯人に語りかける苦肉の策を取る。

巻島は6年前の児童誘拐事件で犯人を取り逃がした上、人質の児童も殺害され、世間から袋叩きに会い失脚した過去を持つ。彼は番組で打ち合わせにない発言で犯人を挑発。番組は高視聴率を記録し、犯人を名乗る大量の手紙が届くが、その中から、犯人しか知り得ない情報が書かれた手紙が見つかる…。

雫井脩介原作の同名ベストセラー小説の映画化だが「原作も脚本も物語として完成度が高かった」と豊川。加えて「これまで演じた役柄は一匹おおかみ的なキャラクターが多かったが、今回は組織の中で苦悩する個人。俳優という職業では理解できないサラリーマン的な生き方を経験できて面白かったです」。

警察組織の論理に最初から最後まで翻弄され続ける巻島にサラリーマンの悲哀を感じる人も多いはず。

「第三者的に見て、巻島という人物には同情できました。だから“悪いのは君だけじゃない”と彼にエールを送りながら演じました」。

映画は単なるサスペンスではなく、警察組織内の権力争いや足の引っ張り合い、映像メディア批判などさまざまな要素が重層的に混在している。ただ、それはあくまでも舞台回しで「むしろ純粋なエンターテインメント作品として楽しんでもらいたい」と話す。

演じる上で最も困難で印象に残っている場面は、被害者となった子供の遺体と対面したときの表情づくりだったと振り返る。

「子役の男の子に雨の中、実際に地面に倒れてもらったのですが、できれば僕自身、この場面は演じたくなかった…」。何の罪もないのに命を奪われた子供の遺体を直視できなかったというのは、それほど全力で刑事役に打ち込んだという証明ともいえる。

最近はテレビより映画で活躍する機会が多い豊川だが「ひとつの場面をじっくり集中して演じられる映画は、テレビドラマよりも大きな達成感が得られますね」。一つの仕事を成し遂げた自信をのぞかせた。

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