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本物に負けない愛と汗
映画「エアギター〜エピソード ゼロ〜」 
    東京朝刊 by 岡田敏一
大音響のロック・サウンドに合わせてギターをかき鳴らすマネをするパフォーマンス「エアギター」。先ごろ日本人タレントがフィンランドで行われた世界選手権で2連覇を果たし、日本でも人気が高まっている。10月6日公開の「エアギター〜エピソード ゼロ〜」(アレキサンドラ・リプシッツ監督)は、そんなエアギターの初の米予選会(2003年)とその年の世界大会の模様を追ったドキュメンタリーだ。

「エアギター〜エピソード ゼロ〜」で、本物以上の熱演をみせるC・ディディ
「エアギター〜エピソード ゼロ〜」で、本物以上の熱演をみせるC・ディディ

エアギターがブレークしたのは1996年、フィンランドの南部でエアギターを楽しむ若者の様子がメディアで紹介されたのがきっかけ。これを機に、ストリート・イベントとして初の世界大会が行われ、爆発的に広まった。

映画はそんなエアギターの歴史に始まり、大会で大暴れする個性的な出場者(演奏家?)のパフォーマンスや熱い思いを紹介する。うつろな表情で自己陶酔しながら演奏する者、腕を風車のようにぐるぐる回し、激しくジャンプする者、ステージをのたうち回りながら床に寝そべる者…。派手なパフォーマンスに大歓声で応える聴衆。ある意味、普通のロック公演より盛り上がっている。

なかでも、大きなキティちゃんの胸当てをし、真っ赤な着物姿で暴れ回る韓国系米国人、C・ディディ(本名=デヴィッド・ジュング)と、ニューヨーク出身のビヨルン・トゥロック(同=ダン・クレイン)の2人が面白過ぎる。

エアギターがブームになる前、CNNがその模様をリポートするが、スタジオの司会者の締めの一言は「エアギター?。ばかな遊びを考えたもんだ」。多くの人は今もそう思っているだろう。しかし本作を見れば、大ブームには然るべき理由があることが分かる。

「一瞬だけロックの神になれる」「エアギターは立派な芸術表現」「音楽への愛情表現。だってホントのギターは弾けないから」…。彼らは本物の演奏者より真剣なのだ。

そして本質を突くのが「エアギターは最後の芸術。形がないから商品化されないし、誰も盗めない!」という一言。インターネットやデジタル技術の進化で無味乾燥なコピー文化があふれる昨今、生身の人間が汗を飛び散らせる予測不可能なパフォーマンスに人気が集まるのは至極当然だ。

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