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映画「パンズ・ラビリンス」 キリスト受難劇ほうふつ
主演、イバナ・バケロに聞く
    東京朝刊 by 岡田敏一
昨年度のアカデミー賞で撮影賞など3部門を獲得した「パンズ・ラビリンス」(10月6日公開)は、内戦後の混乱が続くスペインを舞台にした異色のファンタジーだ。スペイン、メキシコ、米の3カ国合作。製作、監督、脚本はメキシコ出身の鬼才、ギレルモ・デル・トロとあって、並のハリウッド大作とはひと味違う。主人公を演じたイバナ・バケロ(13)は、「勇気ある少女を、スクリーンに映らない部分まで表現するよう努力しました」と振り返った。

ハリウッド作品とはひと味違う「パンズ・ラビリンス」
ハリウッド作品とはひと味違う「パンズ・ラビリンス」

バケロが演じる主人公オフェリアの可憐な姿。そして、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(2004年)を監督したアルフォンソ・キュアロンが製作者に名を連ねていることから、ハリポタ風のファンタジーを想像したら、それは大きな間違い。基本は暗く陰鬱(いんうつ)で子供よりむしろ大人向けの寓話(ぐうわ)といった趣だ。

内戦集結後も混乱が続く1944年のスペイン。おとぎ話が大好きな少女オフェリアは、ゲリラ制圧に血道を上げる将軍と再婚した臨月の母とともに、とある山奥にやってくる。

ある日、オフェリアは、昆虫の姿をした妖精に導かれ、自宅の庭の奥にある迷宮(ラビリンス)に入る。そこで半人半獣のパン(牧神)に出会う。パンによると、彼女は魔法の王国の王女の生まれ変わりで、満月の夜までに3つの試練を乗り越えれば本当の両親が待つ魔法の国に戻れるという。彼女はそれを信じ、3つの試練に立ち向かう…。

約1000人の候補者からオーディションで選ばれたスペイン生まれのバケロ。04年の映画デビュー以来、欧州では実力派の子役で知られた存在だった。

イバナ・バケロ
イバナ・バケロ

「監督が自宅にやってきて『ぜひ君と』と言ってくれました。本当にうれしかった。なぜ選ばれたかって?演技や表現力を認めてもらったと確信しています」

しかし、喜んだのは、むしろ、監督の方だった。当初、オフェリア役は7、8歳を想定していたが、バケロの黒い瞳にほれ込み、脚本を書き直したという。

周囲の期待も大きいオフェリア役だけに、大人の女優顔負けの洞察力と心構えで演じた。

「彼女にとってファンタジーの世界は現実逃避ではなく、現実と折り合いを付ける手段だったのです。周囲の女性を守ろうとした勇気ある女性。その強さをスクリーンに映らない部分まで表現するよう努力しました」

監督の印象は?

「彼は天才。演技指導も想像を絶するほど細かい。でも子供の扱いがうまいので楽しい仕事ができたわ!」

冷酷で暴力的な父。自分よりも、これから生まれてくるおなかの赤ちゃん(弟)が大事な母…。心のすさんだ周囲の大人たちの中で、たった一人、やさしい心を持つオフェリアは大人たちの苦難を背負う殉教者のごとき存在である。

キリスト受難劇を思わせる展開は、結末も当然、受難劇を踏襲しているが、感動的でありながら胸が締め付けられる。キリスト教の国々で高く評価されるのは当然だろう。

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