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浜辺で“宝物”を探そう! 
ひそかな人気、漂着物拾い集める「ビーチコーミング」
  東京朝刊 by 森浩
そろそろ海が恋しくなる季節だが、浜辺を散策しながら漂着物を拾い集めて楽しむ「ビーチコーミング」がひそかに人気を集めている。貝殻やゴミだけでなく、流れ着いた思わぬ品に出合えるのが魅力という。泳ぐだけではなく、海へ“宝探し”に出かけてみよう。

棒などを持ちながら浜辺を散策。子供だけでなく、シニアの趣味としても人気だ(撮影・森浩)
棒などを持ちながら浜辺を散策。子供だけでなく、シニアの趣味としても人気だ(撮影・森浩)

ビーチコーミングとは、砂浜をコーム(Comb=くし)でとくようにして、漂着物をくまなく探すところから名付けられた。アメリカ西海岸を中心に欧米では盛んに行われているという。

「生き物だけでなく、入れ歯、ライター、携帯電話、腕時計など生活にかかわるあらゆるものを発見する楽しさがあります。ここ数年日本でも愛好者は増加中です」と魅力を語るのは、葉山しおさい博物館(神奈川)館長の池田等さん。

池田さんはビーチコーミングの趣味が高じて『ビーチコーミング学』(東京書籍)を出版した。「(日本ではあまり見ない)ゴム底の付いたゲタを見つけたとします。どういう旅を経てここに来たのか漂着物の由来に思いをはせるのがおもしろい。生き物だけでなく、他国の文化や環境問題など、たくさんの発見があります」と池田さんは熱っぽく語る。

“発見物”の利用方法もいろいろだ。「外国からの漂着物」「動物や魚の骨」「なんだかまったく分からないもの」など、分類してコレクションするのが一般的だが、貝殻などを利用して工芸品を作って楽しむ人も多い。例えば、漂流中に角が取れて丸くなったガラス瓶の破片は“ビーチグラス”と呼ばれ、手作り工芸品の材料になるという。また、大人数で楽しむときは、見つけ出すのが難しい順に点数を決め、得点を競うこともできる。「ルールはありません。思い思いで楽しめます」(池田さん)

医療系は×
さほど準備もなく楽しむことができるが、注意点もある。

ビーチコーミングに詳しい砂浜美術館(高知)の村上健太郎さんは、「絶対に触ったり拾ったりしてはいけないもの」として、針のついた注射器、薬品の瓶といった医療関係の廃棄物を挙げる。「医療系廃棄物は意外と多く打ち上げられています。また、硫酸がはいった容器などが打ち上げられているという報告もあり、用心する必要があります」と村上さん。

猛毒を持つ生物にも注意が必要だ。「ゴンズイ、カツオノエボシ、ヒョウモンダコといった生物ですが、うっかりつかんでしまって毒針が刺さったりする可能性もあります」と村上さんは指摘したうえで、「浜辺を歩くと『こんなにゴミがあるんだ』ということを感じると思います。海洋の環境悪化を意識するいいきっかけにもなります」と、ビーチコーミングの意義を語る。

学会も設立
町のPRとして、活用しているのが千葉県館山市。平成15年から修学旅行生を積極的に誘致しているが、ビーチコーミングを一つの目玉としてすえている。「30キロを超える長い海岸線を有していることから、ビーチコーミングに最適です」と同市商工観光課。

漂着物を専門に扱う学会も発足した。漂着物研究家の石井忠さんらが中心となって、13年に立ち上げたのが漂着物学会だ。論文発表なども行っていて、サイト(http://www.drift-japan.net/index.php)では、会員らがビーチコーミングで集めた“新着”の漂着物を紹介している。

深刻さを増す海岸のごみ問題
漂流物散策の人気が広がる一方で、海岸のごみ問題は深刻さを増している。

環日本海環境協力センター(富山)の推計調査によると、1年間に日本の海岸へ打ち寄せられるごみの量は約15万トン。環境省は海岸への漂着ごみの実態を把握するため、9月から2年かけて漂着量が著しい全国5県7カ所で調査を実施する。漂着物の分類や解析を行い、効果的な清掃や処理手法を検討する。同省環境保全対策課は「対馬などではごみが1メートル以上堆積(たいせき)している海岸もある。国内外のどこから来るのかを含め、漂着するメカニズムを探りたい」としている。
ビーチコーミングに必要なもの
拾ったものを入れるビニール製の買い物袋、カメラ、筆記具、ナイフ、古新聞、ルーペ、傘、厚底の靴か長靴、図鑑を用意すると便利。軍手か手袋は必須。



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