産経Webへ戻る
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | 産経Web
自然体、つづる日常
書籍「板尾日記2」 芸人・板尾創路に聞く 
  東京朝刊 by 岡本耕治
「私生活を感じさせない男」と呼ばれるお笑い芸人、板尾創路が日常をつづった日記の第2弾「板尾日記2」が発売された。

芸人・板尾創路(撮影・大山文兄)
芸人・板尾創路(撮影・大山文兄)

「日々、書いてるときは気づかないけど、読み返すといろんな発見がありますね。自分は地味だと思っていたけれど、意外と社交的だな、なんて気づいたり」

もともとは「本を出さないか」という出版社の依頼を断るために「日記なら書けます」と言ったことから始まった企画だった。

実現しなかった面白そうな企画、街で出会った奇妙な人々、映画や本の感想、眼科の医師がコテコテの大阪弁で何だか説得力がなかった話…。淡々とした筆致で日常が書かれており、板尾の頭脳がさまざまな出来事を飲み込み、咀嚼(そしゃく)していくさまが、興味深い。

「毎日、その日に思ったことを書いていくだけ。修正はほとんどしてない。たとえ文法的に変でも、あとから直すと、何かうそっぽくなるんですよ」

「笑わない男」と呼ばれる板尾の日記には、「一億円貰(もら)えるより、一億人を笑わす一言の方が欲しいわ、マジで」という記述や、客席で大笑いする客を見ながら「あれだけ笑うと、どんな気持ちがするんやろ?(中略)なんか、淋(さび)しいものが込み上げてきた」といった言葉があり、「お笑い」を職業とすることの厳しさや悲哀も伝わってくる。

「ぼくかて笑うときは笑うし、どんな仕事も大変なのは一緒。でも、一つの笑いを取るために自分を追い詰めないといけなかったり、かと思うとがんばりすぎない方がよかったり。正解がない仕事なので、悩むことは多いですね」

映画「ワースト☆コンタクト」「空中庭園」、テレビドラマ「芋たこなんきん」など、演技での活躍も目立つ。日記でも演劇や映画への言及は多く、演技について強い関心を持っているようだ。

「お笑いは客席のリアクションがあるけれど、映画は上映されるまで、自分が作品全体にどうはめ込まれているのかすら分からない。想像を超えて面白いものになっていたり、そうではなかったり。そこが楽しいですね」

現在書いている日記は「板尾日記3」として来年発売される予定だ。「板尾日記10」が発売されるころには、どんな芸人になっているのだろう。

「さあどうでしょう。この先、自分がどんなことやれるのかなという期待と不安がある。今のまま、好きなことができればいいんですけど」

スタイルに合った日記
平成18年の出来事をつづった「板尾日記2」の元になった実物の日記帳。ごく普通の大学ノートに、鉛筆で書いたきちょうめんな字がならんでいる。

これまで日記をつけた経験はなく、公開を前提としたこの日記が初体験だ。かつてはコラムなども書いていたが「しめきりのある文章は苦手」と、最近はあまり文章を発表することはなかった。日記というスタイルが合っていたようだ。

その“コツ”について「ないことは書かない、無理に面白おかしくしない。なるべくシンプルに抑えて書いていった方が、1年分を通して読んだときに味になるような気がします」と話している。
記者のひとりごと
不条理なオリジナル歌詞を朗々と歌う「シンガー板尾」シリーズや、インド人の“嫁”と子を連れて毎回守銭奴ぶりを見せつける「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」(日本テレビ系)の「板尾の嫁」シリーズなど、シュールな芸風で知られる。

どんな無理な設定のギャグでも真顔で演じきり、説得力を持たせてしまう不思議な人物だけに、その日常をつづった日記は興味深かった。しかし、日記でだいたいの人柄を理解したつもりが、実際に会った板尾創路は、ミステリアスな人物のまま。こちらの質問にぽつりぽつりと答える。特に奇をてらった受け答えをするわけではないが、どこかとらえどころがない。

演技の勘はするどく、映画やドラマでは実に多彩な人物に化けている。それにしても、露出すればするほど正体がつかめなくなる人物というのも、面白い。





産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
Copyright(C)2007 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです
記事関連情報
【プロフィル】板尾創路

いたお・いつじ 昭和38年、大阪市生まれ。吉本総合芸能学院(NSC)を経て、ほんこんと61年にコンビ「130R」を結成。平成3年、ダウンタウンの「ごっつええ感じ」(フジテレビ)のレギュラー出演で人気が集まる。現在はバラエティー、ドラマ、映画とさまざまなジャンルで活躍中。