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想像力豊かな子供を願う
「長くつ下のピッピ」作家、リンドグレーン生誕100年
  東京朝刊 by 堀晃和
児童文学の傑作「長くつ下のピッピ」などで知られるスウェーデンの女性作家、アストリッド・リンドグレーン(1907〜2002年)が今年生誕100年を迎える。この連休に早くも記念イベントが開かれているほか、複数の出版社が新訳の刊行やフェアを準備中。独立心旺盛で空想力豊かな子供の成長を願ったリンドグレーンのメッセージが改めて注目を集めそうだ。

スウェーデン大使館で行われている「スウェーデン児童文学フェア」=東京都港区
スウェーデン大使館で行われている「スウェーデン児童文学フェア」=東京都港区

リンドグレーンはデビュー翌年の1945年に「長くつ下のピッピ」を発表して人気作家に。「ピッピ」や「やかまし村」のシリーズなど94年間の生涯に書き残した作品は、約90の言語に翻訳され、出版部数は総計1億4500万部に上っている。日本でも半世紀も前から出版され、ロングセラーを続けてきた。

生誕100年の今年、スウェーデン大使館(東京都港区)では、大使館内で4月28日から今月13日にかけ、「スウェーデン児童文学フェア」を実施。リンドグレーンの年譜や作品を展示し、読書スペースを設置したほか、セミナーや映画上映などを開催している。

リンドグレーン作品の魅力について、増井アネット文化参事官は「『ピッピ』のような空想的な物語、『やかまし村』のような牧歌的な話、貧しい人たちに焦点をあてた社会的な作品などを通じて、子供の自立を描いた。日本ではスウェーデンの児童文学への関心や評価が高いが、これは彼女のおかげ」と話す。

「ピッピ」の発表当時、男の子を投げ飛ばし、学校や社会の慣習に縛られない「世界一強い女の子」の物語は、大人気となるとともに議論の的にもなった。フェアで他の作家らも紹介。来日した作家のカーリン・ヴィルセーンさんは「『ピッピ』は、子供は小さくて弱いというイメージを変えた。強くて何でも一人でできる強い女の子に、子供たちはあこがれ、勇気づけられた」と話す。

一方、作品集や絵本など多くのリンドグレーン作品を刊行している岩波書店では、1万5000校の小中学校に呼びかけて「ピッピたちへ手紙を書こう!」キャンペーンを実施。11月の生誕100年に向け、日本初翻訳の「やねの上のカールソンだいかつやく」をはじめ、ピッピの新訳、子供時代の伝記や写真集を刊行する予定だ。徳間書店も新刊を準備中という。

岩波書店の担当者は「リンドグレーンは社会の現実をファンタジーの形で見せた。これを機にさらに多くの人に知ってもらえれば」と期待している。



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