行楽シーズンや夏の到来を前に、大阪府医師会(大阪市天王寺区)では「ペットボトル症候群」への注意を呼びかけている。冷えた清涼飲料水は口当たりもよく、つい飲みすぎてしまいがち。しかし、多量の糖質が含まれており、糖尿病予備軍や肥満傾向のある人が過剰摂取した場合、だるさや多尿、のどの渇きといった糖尿病と同様の症状につながることもある。同医師会理事で、糖尿病を専門とする中石医院院長の中石滋雄医師に注意点などを聞いた。
ペットボトル症候群という名称は俗称で、正式には「ソフトドリンク(清涼飲料水)ケトーシス」と呼ばれる。
糖質を含む清涼飲料水を“水代わり”のように摂取する10〜20代が増加。なかには、清涼飲料水を1日に2〜3リットルも飲む生活をしていた高校生が、意識障害で病院に運ばれたケースなどもあり、ペットボトル症候群は社会問題としても注目されるようになった。
中石医師は「糖尿病外来などで、驚くほど血糖値が高い患者さんに聞いてみると、何週間、場合によっては何カ月間にもわたって、清涼飲料水を飲み続けていたということが少なくない」と話す。
悪循環
清涼飲料水には、平均約10%の糖質が含まれている。1・5リットルのペットボトルの場合、100〜150グラム。中石医師は「細いグラニュー糖のスティックで30本以上。なかには、60本分もの飲み物もある」と指摘する。
こうした糖質はデンプンを加水分解して得られる単糖類で、体内への吸収が早い。糖質の過剰摂取で高血糖状態になった場合、尿として水分が排出される。すると、のどが渇くため、より多くの水分を摂取しようとする。このとき、水やお茶ではなく清涼飲料水を飲んだ場合、さらに多尿となり、のどが渇く…という悪循環に陥ってしまう。
その結果、血糖値を維持するホルモン・インシュリンの働きが間に合わなくなり、ケトンと呼ばれる毒性を持った代謝成分が血液中に発生し、糖尿病と同様の状態に陥る。全身の倦怠(けんたい)感のほか、腹痛や嘔吐(おうと)、場合によっては、意識障害のような危険な状態を引き起こす。
バランス
厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査などによると、肥満度を表すBMI指数で、肥満とされる指数25を超える日本人男性は20代で2割、30代で3割にのぼる。また、成人の6、7人に1人が、糖尿病予備軍といわれている。
現在は健康志向の高まりで、無糖や人工甘味料を使った製品が増え、救急患者は減少している。しかし、肥満や糖尿病予備軍といった“危険因子”を持つ人は増えており、水分の取り方についての注意啓発が必要という。
中石医師は「のどの渇きは、体が発するサインの一つと知ってほしい。こういうときは、水やお茶での水分補給を。糖質が入った清涼飲料水を大量に摂取すると、肥満や生活習慣病にもつながる。清涼飲料水が駄目だというのではなく、自分の体調にあわせて、バランスの取れた水分補給の仕方を工夫してほしい」と話している。