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社交の場に利用しては?
「都会ピクニック」のススメ 気取らず自由に
4月6日(土)  東京朝刊 by 頼永博朗 
屋外で過ごすのが心地よい季節。大型連休を利用して、家族でピクニックを楽しむ人も多いだろう。そのピクニックを「社交の場」としてとらえ、都市にある公園などで楽しむことを提案している人たちがいる。東京を拠点に活動する「東京ピクニッククラブ」(TPC)。主宰で東京大学国際都市再生センター特任研究員の太田浩史さん(38)に、都会で開くピクニックの楽しみ方と、その課題を聞いた。

TPCのピクニックは、集合も解散も三々五々。昼寝も読書も、1人で音楽を聴くのも自由で、形式張らない。これなら、屋内のホームパーティーのように会話が途切れて気まずくなることはない。「初対面の人を気軽に誘えるので、紹介する場として有効」と太田さん。

食事は、各自が持ち寄る。ただ、凝った手料理は、「参加者に『褒めなきゃいけない』というプレッシャーを与える」という理由で、太田さんらは避けている。一方、煮炊きはご法度。「バーベキューなどをすると、誰かが調理という労働を課せられる。それではホストとゲストができてしまうし、そもそも休暇にならない。大量な生ごみも出る」からだ。

道具にこだわり、使い捨ての割りばしや紙コップは使わない。「人が集う場では、やぼ」と、ふだん家庭で使う食器をピクニックセットに入れて持ってくる。

共有空間の可能性
TPCは、都市計画の専門家や建築家らが集まり、平成14年に結成された。会員は約80人。会員とその家族や知人の交流の場として、都心の公園などで月に数回、実際にピクニックを開催しながら、都市にある共有空間の利用可能性を探究している。

千葉県柏市の都市開発予定地で20日まで開催されているのは「柏の葉キャンパスシティ ピクニック月間」。実行委員会の一員として参加しているTPCは、飛行機の形に刈った芝生と、飛行機型に刈り取られた芝生の跡を会場内に展示している。

太田さんらは、この作品で「芝生がピクニックをするために、飛行機になって飛んできた」ことを表現する一方で、「人に開放されないことに嫌気をさした芝生が、飛んでいってしまった」と都会の公園に対する皮肉も込めている。

権利とマナー
TPCでは「ピクニックは都市生活者の権利」として、「ピクニック・ライト(権利)」という考え方を打ち出している。「今の都市にある公園は芝生に立ち入れなかったり飲食が禁止されていたり、制約も多い」とし、アート活動などを通じ、都市にある緑地の開放を求めるメッセージを発信している。

太田さんらは、利用する都市生活者の意識改革も望む。「日本にも野だてや花見といった空間や時間、出会いを大切にするピクニック文化がある。にもかかわらず、今の花見などは酒を飲んで騒ぐだけの場になっているのが残念」。都市の公園が排他的になりがちなのは、ごみを持ち帰らない利用者の不作法によるところも大きい。

太田さんによると、ピクニックはフランスの政治集会を起源とし、19世紀のイギリスで食事を屋外で楽しむ現在のスタイルに変化。その後、欧米の都市に公園が整備され、鉄道や自動車の普及に伴い、庶民の娯楽として広まった。

太田さんは「歴史的にみて、ピクニックは公害など都市環境の悪化による居住者の不自由を補完する空間利用の知恵だった。その有益性は、現代の暮らしの中で見直されていい」と話している。

「ピクニック15の心得」
(1)ピクニックは社交。形式張らない出会いの場と心得るべし

(2)屋外の気候を生かすべし。蒸し暑い日には涼風のナイトピクニック、寒いに日には日だまりのランチピクニック、適した時間と場所を見つけて楽しむ

(3)思い立ったが吉日

(4)統一性を求めてはならない。思い思いに場を共有する緩い集まりであるべし

(5)ホストはいない。すべての人が平等な持ち寄り食事が原則

(6)労働を課してはならない。キャンプのような勤勉さとも無縁

(7)料理は手軽さを旨とする。しかし、安易であってはならない

(8)煮炊きをしてはならない。しかし、お茶の湯だけは例外

(9)道具にこだわりを持つべし。ピクニックは生活様式の表出

(10)ラグ(敷物)に上がりこむのではなく、囲んで座るべし。ラグは集まりの象徴であるから

(11)事件は付き物。悪天候、池に落ちる、食べ物が鳥にさらわれるなどのハプニングに遭っても泣いてはいけない

(12)三々五々集散すればよい。途中で帰る人を引きとめてはならない

(13)ごみを残して帰ってはならない

(14)野営はピクニックには含まれない。けんかをしても恋に落ちて も、とりあえず帰路につくべし

(15)雨降りは新たな幸いととらえるべし。楽しみの形は1つではない





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