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市川團十郎「勧進帳」 市村萬次郎「女暫」
伝統の芸 鮮やかに再現 五月大歌舞伎
  東京朝刊 by 生田誠
市川團十郎
市川團十郎
明治の名優、九世市川團十郎、五世尾上菊五郎を記念した「團菊祭五月大歌舞伎」が歌舞伎座(東京・東銀座)で行われている。昼の部では市川團十郎(現・十一世)がパリ・オペラ座(3月)でも演じた「勧進帳」で、夜の部では市村萬次郎が「女暫(しばらく)」で、名優たちの伝統を受け継ぐ舞台を再現している。(生田誠)

九世團十郎ゆかりの「勧進帳」は、明治20年4月、ときの外務大臣、井上馨邸で開かれた天覧歌舞伎(明治天皇列席)の演目に選ばれた。今年4月に東京・六本木の国際文化会館(井上邸跡)で行われた平成の天覧歌舞伎でも上演され、この團菊祭でも「天覧歌舞伎百二十年記念」として團十郎が“再現”することになった。

「めったにないことだし、ひとつの流れの中での巡り合わせだと思う。天覧歌舞伎は実際の舞台の間口は小さいけれども(意味は)大きな舞台です」。昨年5月の團菊祭で病い(白血病)から復帰した團十郎は、今年3つの“大舞台”で立て続けに「勧進帳」を演じることに。さらに紫綬褒章の喜びも重なった。

「日本で一番人気のある勧進帳を、パリでもやらないという手はない。『静の中の動』という日本の演劇の魅力を今回、フランス人にもわかっていただけた」。花道のないパリ・オペラ座では長男の海老蔵と弁慶、富樫を交代で演じ、弁慶の六法(引っ込み)では別の演じ方を採用した。そうした試行錯誤を経た上のスケールの大きな「勧進帳」に期待がかかる。

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市村萬次郎
市村萬次郎
夜の「女暫」は平成13年に84歳で亡くなった名優、十七世市村羽左衛門の七回忌追善狂言として上演される。羽左衛門ゆかりの歌舞伎十八番「暫」だが、二男の萬次郎は女性版「女暫」の巴御前として演じ、長男の坂東彦三郎、三男の河原崎権十郎、孫(萬次郎の二男)の光らも加わる。

「父は立ち役だったので、得意だった熊谷(直実)を、女形の私はやることができない。『暫』なら大勢の人に出てもらえる。『女暫』の形で上演することをお許しいただきました」と萬次郎。「暫」の鎌倉権五郎ではなく巴御前が宴の席に現れて、勇ましく争いを止める物語。最後は素に戻り恥じらう女性となる。

「父は『歌舞伎にはこうした形もある』ということを後世に残したいと思い、舞台で演じてきた人だった。十五世(羽左衛門)を尊敬しており、小さなことにもプライドをもっていた」。橘屋の一門を守り、歌舞伎を外国人に見せる自主公演を続けている萬次郎にとっては、大きな華を咲かせる舞台となる。

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五月大歌舞伎は25日まで。ほかに尾上菊五郎、中村芝翫、中村梅玉らが出演。問い合わせは(電)03・3541・3131。



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