問い合わせも減少に

「取説」ページ減の動き　わかりやすく、写真多用

　 東京朝刊　by 森浩

家電製品に付いてくる分厚い取扱説明書。見るだけで読む気がうせ、読まずに製品を使い始めてしまうことも多い。多機能化でページも増加の一途だったが、ここに来てレイアウトを工夫したりインターネットを活用したりして「わかりやすさ」を追求する動きが広がっている。

松下電器が扱うドラム式洗濯乾燥機の現在の取扱説明書。以前に比べ、イラストや写真を多用し見やすくなっている

「取扱説明書の厚みはどんどん増す傾向にありました」と話すのは松下ホームアプライアンス社経営戦略グループの松本賀代子さん。

松下電器が自社のテレビで調べた結果、平成８年に６８ページだった取扱説明書のページ数は、ＢＳデジタル放送が始まった１４年には実に２１６ページに達していた。テレビの多機能化も背景にあるが、製造者責任法（ＰＬ法）の施行で「安全上の注意」を促す表示が欠かせなくなったことも一因だ。

「意識調査では説明書を見ていない利用者が１６％で、『読んでもわからない』という人も６割近くに達している。その一方で、お客さまからの使い方に関する相談も増えた。何とかしなくてはならないと感じました」（松本さん）

松下電器では１６年から雑誌の編集の手法をマニュアル作成に取り入れた。カラー印刷を採用し、イラストや写真を増やす一方で文字を減らし、“見やすい紙面”を目指している。

例えばテレビの場合、それまでの説明書は３冊に分かれたうえに説明の重複も目立ったが、必要な情報を整理し、８ページほどの「導入編」といえる簡単なガイド冊子を作成した。「手に取りたくなる説明書を目指しました」と松本さん。

同社では今年度末までに主要商品でページ数を従来の７割程度にまで圧縮したい考えだ。

オリンパスイメージングでも昨年、デジタルカメラ「ＳＰシリーズ」で取扱説明書を２００ページから１１０ページ程度に減らした。減らした分を補うのは「取扱説明書応用編」としてインターネットのサイトに設けた「ハウツーグッドピクチャー」というコーナーだ。

撮影テクニックや操作法などやや高度な内容を提供する。「紙とウエブの両方を活用してわかりやすいマニュアルを目指しています」と同社広報では解説する。また、家電各社ではサイトからダウンロードできる仕組みを広げている。

家電自体にマニュアルを装備する「組み込み式」も広がっている。日本ビクターの液晶テレビ「エグゼシリーズ」は、「画面で見るマニュアル」を搭載する。テレビ本体に「電子番組表の使い方」や「番組予約」などの取扱説明書でよく使う部分を記憶させ、説明書を探さなくてもリモコンを使って画面上で簡単に確認できる仕組みだ。

広がりを見せる「簡単なトリセツ（取説）」への試み。「そもそもは技術的な解説をする冊子だから、難解なものが多い」と語るのは、わかりやすい取扱説明書の普及を手がけるテクニカルコミュニケーター協会（東京）事務局長の三堀邦夫さん。

「『わかりやすく』『薄く』という傾向はここ数年で強まってきている。取扱説明書の充実はコールセンターへの電話の件数を減らすことにもつながり、企業にとってもメリットのあること」と解説している。

必要なときになぜか見つからないのが取扱説明書。紛失を防ぐため便利なアイテムやサイトが登場している。

ヒット商品となっているのが、まとめて保存できる専用ファイルだ。事務用品メーカーのキングジム（東京）はその名も「取扱説明書ファイル」を販売中。耐久性に優れた厚手の素材を採用し、説明書を入れても破れにくいほか、ＣＤ−ＲＯＭなどが保存できるポケットも付けた。

わかりやすいネーミングもあってか、一昨年１２月の発売以来４０万冊を売り上げた。従来のＡ４サイズに加え、今月にＡ５サイズも投入した。

また、インターフェイス・テクノロジー（山梨）は昨年、デジタル家電の取扱説明書を閲覧できるサイト「マニュアルネット」（http://www.manualnet.jp/）を立ち上げた。家電だけでなく金融商品の約款も掲載、マニュアルをなくしてもすぐにパソコン上で探し出せる仕組みだ。

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