産経Webへ戻る
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | 産経Web
7月にも底…商機逃す あわてて設備投資
パスモ販売制限1カ月 予想外の人気、波紋
  東京朝刊 
首都圏の私鉄・バス用ICカード乗車券、PASMO(パスモ)が、カードの在庫不足で4月12日に販売を制限して1カ月がたった。大きなトラブルは回避したが、好調な出足に水を差す一部販売中止には「販売が継続できていれば…」と、商機を逃した恨み節も聞こえる。一方、パスモの展開に慎重だった企業の中には、予想外の売れ行きにあわてて設備投資を手当てするなど、あちこちで波紋が広がっている。

人気の「パスモ」は、電子マネー機能にも期待が高まる=東京都新宿区

いぜん好調
パスモの販売枚数は、5月9日時点の最新集計で約384万枚に達した。先月12日にパスモ定期を除いて販売を中止したが、定期だけで1日あたり1〜2万枚の申し込みがあり、結局1カ月間で約57万枚増加した。

販売制限の理由は、パスモ発売から約3週間の先月11日時点で販売数が327万枚に達し、当初確保した400万枚のカードが底をつく懸念が強まったためだ。急遽(きゅうきょ)、追加発注したカード300万枚の納入は早くて8月。順次納入されつつあるもともとの下期分100万枚を使って、8月まで何とか乗り切る必要がある。だが、月50万枚の今の売れ行きが続けば、7月中にカードが底をつく綱渡りの状況だ。

明暗さまざま
「(売り逃した)機会逸失はある。身から出たさびですが」とため息を漏らすのは、京王電鉄の下村良太常務だ。京王は自社のクレジットカードと連動したオートチャージ(自動入金)パスモの拡大に力を入れ、クレジット会員も4万人増加するなど順調な滑り出しをみせていただけに、口惜しさもひとしおだ。

東京メトロもパスモ発売に合わせ、派手に広告を打ってオートチャージ用クレジットカードを新規発行し、3月末までに1万5000人の会員を集めた。そのオートチャージの販売中止で、「クレジットそのものの申し込みが減っている」(広報部)と頭を抱える。

一方で、私鉄では規模の小さな相模鉄道は、今期業績予想で本業の運輸業の営業利益が約20億円の減益になると発表した。パスモ導入に伴う設備の拡充などに年間10億円の費用負担が経営を圧迫した形だ。「パスモは導入まもないため、(関連売り上げなど)増収効果を見込むのは難しい」(畠山正彦取締役)と、当面は持ち出しを覚悟している。

売店利用も拡大
ただ、想定を上回る普及状況をみれば、パスモの機能の中でも電子マネーの分野は順調な拡大が見込まれる。小田急電鉄は当初、駅売店などの売り上げの5%程度と想定したパスモを使った電子マネーの利用が、8%を超えて好調に推移。

京浜急行電鉄も品川駅の電子マネー利用率が10%程度となった。これはJR品川駅のスイカ利用率と同等で、利用開始から短期間でスイカ並みの威力を発揮しつつある。

パスモを読み取る端末機器の導入費用の負担から、京王電鉄は電子マネーサービスの導入で様子見していた。だが、予想外の販売枚数の伸びをみて「誤算だった」(同)と、駅売店や商業施設の電子マネー対応の再検討に入った。同様に京成電鉄も、「電子マネー対応では前向きに検討を始めた」と認める。

IC乗車券や電子マネーの利用は業界の想定を超えて浸透し、パスモ発売で拍車がかかったというのが真相のようだ。



産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
Copyright(C)2007 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです