ハンバーガーチェーンの競争が一段と熱を帯びてきた。マクドナルドが好調さを持続するなか、不振のモスバーガーは初の割引クーポン券配布や24時間営業店拡充など「なりふり構わぬ追撃」に出た。一方、6年前に日本市場から撤退したバーガーキングが再上陸。競争が激しくなるにつれて、各社にとっては商品戦略、店舗展開の重要性がさらに高まりそうだ。
「メガ」ヒット
日本マクドナルドは3月に430億円の月間売上高をあげ、単月の過去最高記録を6年ぶりに更新した。この1年余りで、年間や1日の売上高も最高を記録している。
その象徴となったのが、1〜3月などの期間限定で販売した「メガマック」(350円)のヒットだ。この、牛肉パテを4枚挟んだ最大級のハンバーガーは発売時には、最初の4日間で予想の2倍近い332万個を売り上げ、1日の数量を限定しての販売に切り替えた。
マクドナルドは3年ほど前まで、業績低迷にあえいでいた。平日65円バーガーなどの低価格戦略が失敗だったためと指摘されることが多いが、いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主任研究員は「最大の要因はメニューがワンパターンに陥っていたこと。えびフィレオからメガマックへの流れは、その状況を変えた」と評価する。
新展開に活路
モスフードサービスは4月、ハンバーガーに挟むパテを10年ぶりに刷新した。牛肉100%だったのを牛と豚の合いびき肉に変え、「歯応えを出した」という。
こうした刷新の背景には客数減による販売不振がある。
モスは「少し高価だがおいしい」という路線で他チェーンとの違いを打ち出してきたが、桜田厚社長は「他社が丹念に改善したことで、味への評価が(モス製品と)同質化してきた」と嘆く。
さらに、4月中旬からはマクドナルドが得意とするクーポン券配布にも乗り出した。これまでは、価格競争に発展する懸念から実施したことがなかったが、方針転換し、開始1カ月間の客数は前年同期比1割増と好スタートを切った。
桜田社長は14日の決算発表会見で、「年度内に(利用金額に応じて割引などの特典がある)ポイントサービスを導入したい」と述べるなど、マクドナルド追撃への“次の一手”を準備する。
このほか、ドライブスルーなど24時間営業店は今年3月末の75店から、年度内に200店以上に増やす意向だ。マクドナルドは24時間店が先月で1000店を突破したが、これを見習った格好だ。これらの施策が来店客数増につながるか、独自性を失わせる結果に終わるか、目が離せない。
“雪辱”なるか
「以前は時代が悪かった。今なら高価でも質の高いものは受け入れられる」。バーガーキング・ジャパンの笠真一社長は、こう強調する。
6月8日に東京・新宿に1号店を開く同社の主力商品は、直火焼きの牛肉パテを挟んだ直径13センチの特大ハンバーガー「WHOPPER(ワッパー)」(価格は400円台の予定)だ。笠社長によると、「いまだに国内にもワッパーの熱狂的なファンがいる」とか。
バーガーキングは平成5〜13年に日本で店舗展開したものの、マクドナルドとの安売り競争に巻き込まれて業績が悪化、日本撤退を余儀なくされた。しかし、最近は高級ビールが人気となるなど「ちょっとぜいたく」が消費のキーワードになっており、ロッテと企業再生会社のリヴァンプが出資し、バーガーキング・ジャパンを設立、3年間で50店舗を出店する。
マクドナルドのメガマックのヒットは、バーガーキングが得意とする大ボリューム商品の潜在的な人気を再認識させたが、高価格帯ではモスとの競合があるのも事実。各社が独自の価値を広く認識してもらおうと躍起になっている。