トヨタ自動車は17日、レクサスブランドの最上位モデル「LS600h」を発表した。排気量5・0リットルのエンジンとハイブリッド機構を装備し、メルセデスベンツやBMWの最上位モデルと同等以上の性能と位置づけている。ただし、まったく新しくレクサスとして開発、投入するモデルは、これが初めて。レクサスの既存車種との市場の食い合いの懸念もある。投入から約2年で国内市場に足場を築いたレクサスだが、今後も思うように台数を伸ばせるのか、新たな壁にチャレンジする。
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トヨタが発表した「レクサス600h」。車体を長くして後部座席にゆとりを持たせた「600hL」を含めて価格帯は1510〜970万円=東京都港区(撮影・鈴木健児) |
LS600hの排気量5・0リットルの新型エンジンは、最高出力が394馬力と、これだけでは、メルセデスベンツやBMWの最高級セダンに劣る。しかし、これに224馬力の高出力モーターを組み合わせることで、ライバルをしのぐ性能を引き出した。
トヨタは、その性能を「他社の排気量6・0リットルクラスに比べて動力性能は同等で、燃費は2倍良い」と表現。渡辺捷昭社長は同日の発表会見で、「高級車の概念を変える車だ。今後6カ月で、全世界で7000台、国内だけで4000台を販売する」と強調した。
すでに先行注文は4000台に到達し、今後はさらなる上積みが確実に見込まれている。
とはいえ、こうした販売好調が長続きするかどうかには不安もある。レクサスはこれまで、既存ユーザーの買い替えで販売を伸ばしてきた事実があるからだ。つまり、もともと「LS460」は「セルシオ」ユーザー、「GS430」なら「アリスト」ユーザーという顧客基盤があった。
これに対し、まったく新しく開発されたLS600hには特別な顧客基盤がない。新車効果が薄れた後は、メルセデスベンツやBMWといった輸入車ユーザーから顧客を奪いとる必要があり、「ここからが本当の勝負」(木下光男副社長)というわけだ。
また、最上位モデルの投入は既存モデルの販売台数を侵食する可能性もある。発売当初の最上位モデルだったGS430や「GS450h」は、昨年9月にLS460が投入されて以降、月間販売台数が2けた台に低迷した。今回のLS600hの投入でも同様に、LS460が圧迫される恐れがある。
これらの懸念に対し、一丸陽一郎専務は「LS600hとLS460では価格帯が大きく違う。市場を食い合う心配はない」と説明する。だが、LS460の販売台数の6割は企業の社用車という現実もあり、「企業経営者が新たな『最高級車』に流れる」(業界関係者)との見方は強い。
レクサスの販売台数は現在月間約3800台ペース。新車効果が薄れた時点でこのペースを早められているかどうかで、真価が問われる。