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マグロに触れ写真、行列
観光名所「ツキジ」競り場、制限検討
  東京朝刊 by 内藤慎二
東京都中央卸売市場・築地市場(中央区)で、毎日約500人訪れる外国人訪問客の見学を制限する動きが出ている。競り場でマグロに手で触るなどマナーの悪さが目立ち、業務に支障が生じるため、市場側はこのまま改善がみられなければ、部分的に立ち入り禁止エリアを設けるなどの対応を検討するという。日本独特の競りが見られる「ツキジ」は東京名所の一つだけに、「観光立国」を目指す政府にとっては大きな観光資源を失う事態になりかねない。

午前5時半、築地市場内のマグロの競り場近くに設けられた見学者専用通路。二重、三重の列で埋め尽くすのは、肌の色も言語も異なる外国人観光客たち。米国から来たウィリー・ウイットロックさん(50)は「こんなに大きな魚は見たことがない」と興奮した様子。

東京都市場管理課によると、平成18年の1年間に事前に書類を提出して見学に訪れた外国人は1144人だが、実際は「書類なしに毎日500人ぐらいは来ている」(同課)という。

外国人の数が飛躍的に増えたのは、ここ4、5年のことだ。背景には世界中に飛び火した「すしブーム」があるとみられ、本場の“聖地”を訪れる観光客は後を絶たない。

特に人気を集めるのがマグロの競り。市場関係者の大きな身ぶりやかけ声が、「日本独特でエキサイティング」と好評なのだという。ところが、観光客が増えるのと比例して、マナーの悪さも目立つようになった。

「写真撮影をするときにマグロに触るため、衛生上困る」「競り場の出入り口を観光客が埋め尽くすため、搬送用トラクターが入れない」…。

17年5月には幅1・5メートル、長さ20メートルの見学者専用通路を整備したが、通路外まではみ出すため、作業の妨げになるという。

「珍しいのはわかるけど、こういうふうに入ってこられると邪魔になっちゃうんだよな」と市場関係者。マグロにつまずいて負傷した観光客もいた。同課の玉山哲雄庶務係長は「市場は観光地ではない。六本木や銀座だと思って来られるのは困る」と話す。

同課は4カ国語の案内板を整備するなど、外国人の見学に可能な限り協力してきたが、玉山係長は「今の無制限のような形は工夫したい。場合によっては、マグロの競り場に入れないようにすることもある」としている。

24年度内に東京・豊洲地区に移転が予定されている築地市場だが、海外の旅行ガイドブックには東京の人気スポットとして紹介されている。このままでは、いざ訪れてみたものの、ガイドブックとは違って、競りの光景が見られない事態も予想される。

外国人観光客を誘致する「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(VJC)を展開する国土交通省は、22年までに年間1000万人の誘致を目指している(18年は730万人)。

VJCの協力団体で、外国人観光客の相談を受け付ける国際観光振興機構(JNTO、東京都千代田区)の谷口せい子ツーリスト・インフォメーション・センター長は「マナーの悪化は確か。外国人が楽しく見学できるよう、対外向けホームページで注意点を周知する」と、5月18日から築地市場観光の注意点を掲載し始めた。

だが、市場関係者からは「果たして、それだけでマナーは良くなるのか」と懐疑的な声もあがっている。

外国人観光客の事情に詳しい大阪観光大の塩沢潔学長(国際観光論)の話「あるスポットが観光地として注目され始めると、必ず『見せる』『見せない』で論争が起きるものだ。基本的に観光客の規制には反対だが、本来は仕事場である築地市場の場合は我慢の限界もあるだろう。国は外国人観光客をただ積極誘致するだけではなく、ひずみの解消にも取り組むべきだ」

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