東京の都心でOLらを対象にした少子化に関する講座が盛んだ。「30代以上、未婚・子ナシは負け犬」とつづった酒井順子さんの著書のヒット以降、20代の女性に結婚・出産意欲が高まっていることが背景にあるらしい。少子化問題を取材するライターからは、「女性自身が『産み時は選べない』という事実に気付き始めた。それだけでも一歩前進」という声が聞こえる。
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少子化講座の中で白河桃子さん(右)は、「誰もが(46歳で初産した)ジャガー横田さんになれるわけではありません。自分の体を知って」と呼びかけた=18日、東京・大手町(撮影・村島有紀) |
日本を代表するビジネス街の東京・大手町や丸の内、有楽町のまちづくりを行うNPO法人「大丸有エリアマネジメント協会」は、2月から7月まで4回シリーズで「丸の内OLのための少子化講座」を開催している。
少子化ジャーナリストの白河桃子さんが発案し、事務局の山田裕希子さん(30)が「出産したらキャリアに影響するのでは、と尻込みする女性が多い」という現実を踏まえ、企画した。
1回目は、結婚の実情と、女性の体について▽2回目は独身生活を謳歌(おうか)する男性の本音▽3回目は、アロマセラピーを使った妊娠力アップ、ホルモンバランスを保つための体調管理−などをテーマにした。
毎回約70人を募集し、開催1週間前には満席になる。特に1回目(2月6日)は、柳沢伯夫・厚生労働相の「産む機会」発言(1月26日)の後、応募者が急激に伸びた。
講座に参加した女性(43)は「結婚以外のものを求めて仕事に没頭してきた。でも、ふと気付いてみると、家庭といったものが何一つなくてがくぜんとした。もう一度30歳に戻ったら、今のような選択はしていなかったかも」と語った。
白河さんは「自分が努力しないと結婚も出産もできない時代。そのことに最も気付いていないのが、仕事に遊びに充実した日々を過ごす都心の女性たち。運命の相手は待っていてもこない」と指摘。次回の4回目は、出会いの場はどこにあるかをテーマに開催する予定だ。
また、元サンケイリビング新聞の編集者でフリーライターの三宮千賀子さんは、2年前からOLらと少子化の勉強会を開催している。
昨年、「OL少子対策プロジェクト」を立ち上げ、「いつかは子供を産みたいけれど不安がいっぱい」という独身女性と、「産んでよかった」という子育て中のママの交流会を丸の内で開催したところ、「まるで出産のためのOG訪問」と好評だった。今年も来月9日、東京都千代田区内で開く。
三宮さんは「勉強会を立ち上げた当初は、『OLと少子化なんて…』と笑われましたが、昨年あたりから女性誌が盛んに少子化問題を取り上げて雰囲気が変わった。『先送りしてきた出産だけど、今すぐ向き合わないと、将来の理想のライフスタイルが手に入らない』と感じている人が多くなっている」とプロジェクトを通じた実感を語った。
未婚化の一因に経済的不安
少子化の主な原因は晩婚化と未婚化だ。平成17年の国勢調査では、30〜34歳の未婚者は男性47・1%、女性32・0%。また、50歳時点の生涯未婚率も、男性15・4%、女性6・8%と年々増えている。“パラサイト・シングル”という言葉を生み出し、このほど『少子社会日本』(岩波新書)を出版した山田昌弘・東京学芸大学教授(家族社会学)は、未婚化の一因として、結婚後の経済見通しの不安−を挙げる。
「以前は、まじめに働く男性なら誰でも、よりよい生活を約束してくれる魅力的な男性に思えた。ところが、今は結婚すると、パラサイト(親に寄生)するより生活レベルが下がる。そのうえ『付き合う=結婚』ではないため、より良い相手を探そうとし、結婚を先送りする」と話す。
一方、ワーキングマザーのためのウェブサイト「ムギ畑」を主宰し、このほど『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか』(共著)を出版した経済アナリストの勝間和代さんは、「就職するとデートをしたり、新しい相手に出会う時間もないほど忙しいのが現状。長時間労働を変えないと未婚者は減らない」と、子育て中だけでなく未婚男女にも、ワーク&ライフバランスがとれた働き方が必要と指摘する。