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珠算検定試験、受験者増える
そろばん人気復活 脳トレブームで“元祖”に注目
  東京朝刊 by 栗川喜典/経済部
IT(情報技術)の発達で廃れたかと思われていたそろばんをめぐり、「脳を鍛える」と注目され、学校教育でも強化されるなど脚光を浴びている。日本商工会議所が主催する珠算検定試験では、平成16年度まで減少傾向が続いていた受験者数が増加に転じた。そろばんメーカーの売り上げも少しずつ伸びているという。

全国のそろばん猛者が日本一を競った全大阪オープン珠算選手権大会=4月29日、大阪市中央区の大阪商工会議所(大阪珠算協会提供)
全国のそろばん猛者が日本一を競った全大阪オープン珠算選手権大会=4月29日、大阪市中央区の大阪商工会議所(大阪珠算協会提供)

大型連休の4月29日。大阪市中央区の大阪商工会議所でそろばん日本一を競う「全大阪オープン珠算選手権大会」が開かれた。小中学生から社会人まで199人が個人・団体競技に参加。会場ではパチパチと玉を弾く音が響く中、そろばんを使わず暗算で臨む参加者も多くみられた。

珠算検定は毎年6、10、2月に行われ、検定1〜6級に分かれている。このうち、申し込み者数が増加傾向にあるのは、難易度の高い1〜3級だ。

日商によると、全国の1〜3級の申し込み者数は16年度を底に反転し、18年度は11万8873人を記録した。今年2月に行われた検定の申し込み状況をみると、東京2378人(前年同月比164人増)▽大阪2319人(同83人増)▽名古屋2490人(同23人増)と、3大都市圏を中心に都市部での申し込みの増加が目立っている。

日商の担当者が、そろばん復活の背景にあるとみているのが脳トレーニング(脳トレ)のブームだ。計算などで脳機能を鍛える携帯型ゲーム機のソフトがヒットし、その元祖といえるそろばんが注目されるようになったというわけだ。

そろばんには、計算能力だけでなく集中力を高める効果もあるとされる。珠算検定では制限時間30分以内に所定の設問に答えるが、上位級になるほどケタ数が増え、1級では11ケタ(100億の位)の計算能力を要求されるほどだ。このため、そろばんは認知症予防にも役立つといわれている。

「受験者は小、中学生中心だが、最近は70歳以上の人もいる」。大商と共同で検定を実施している大阪珠算協会の西井昭生事務局長は声を弾ませる。協会では12年度から大阪府下の小学校にそろばん指導の講師を派遣するボランティア事業を展開しているが、「高齢者に教えてもらえないか」という依頼も多いという。

そろばんはまた、子供の計算能力を高める点でも注目を集めている。兵庫県尼崎市は基礎学力の向上を図るため、平成16年度に計算教育特区の認定を受け、授業にそろばんを導入した。「はっきりした効果はまだ分からない」(市教委)というものの、児童や保護者の評判は良く、実施校を当初の1校から15校に拡大した。

そろばんブームは、メーカーにも及んでいる。サクラクレパスの傘下で明治期創業のメーカー、雲州堂(大阪市)によると、国内のそろばん市場は全体で現在2億円規模だが、同社の売上高は17年度で前年度比10%増、18年度で15%増と着実に伸びているという。

「生涯学習にも最適」とPRする雲州堂では、通常の2倍以上の体積の玉を使った「デカパチそろばん」と、やさしいそろばんドリルをセットにした学習キット(3150円)などが量販店などで好調な売れ行きをみせており、そろばんに対する注目度は今後、ますます高まりそうだ。

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