コンビニエンスストア大手各社が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やブログなど双方向型の電子メディアを販促に活用する動きが目立ってきた。既存店の売上高が7年連続でマイナスとなるなど頭打ち感が目立つコンビニ業界では、女性客や普段は来店しない新たな顧客層の開拓が急務。企業が消費者に向かって一方的に発信するだけの従来の広告とは異なる「口コミ」効果を来店増へとつなげる狙いだ。
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ミクシィ上で募集したモデルが店頭販促物に登場するファミリーマートのオリジナル化粧品「MFC」=東京・東池袋のファミリーマートサンシャイン南店(撮影・田村龍彦) |
「ファミマに行ってチェックするね」「買い物に行く機会が増えそう」−。ファミリーマートが、SNS「mixi(ミクシィ)」上に開設したオリジナル化粧品ブランドのコミュニティーサイトでは、ユーザー(利用者)のこうしたやり取りが続く。
同社が3月から店頭販促物に登場するモデルをサイトで募集したところ、9人の定員に約500人の応募があった。ユーザーによる投票には約2万人が参加。さらにユーザー600人にサンプル品を送り、感想も書き込んでもらった。「化粧品を選ぶ際に口コミは重要」との狙いどおり、売り上げは前年比30%増と好調だ。
セブン−イレブン・ジャパンは2年目に入ったおでんのブログ「おでブロ」にリリー・フランキーさんのキャラクターを登場させた。2月に終了するまでの総ページ閲覧数は約55万件。ブログ上では具材の人気投票や「あの具材食べた?」といったやり取りも頻繁に行われた。
ローソンは昨秋のペットフード発売に合わせてホームページ「わんちゃんのおやつ」を開設、誰でもペットの写真やコメントを掲載できるようにした。多い月は800件以上の投稿があり、「コンビニでもペットフードを売っていることを知ってもらう目的は達成できた」(同社)という。
コンビニ各社がSNSやブログを積極的に活用する背景には、客層全体の3割程度にとどまる女性客の拡大や、普段は足を運ばない新規顧客を取り込みたい狙いがある。
SNSは知り合い同士がサイト上で交流していることもあって、「信頼性の高い口コミ効果が狙える」(ファミリーマート)。また、ブログも企業が一方的に流す広告と違い、消費者が率直な感想を伝えあうため、「試してみようというアクションにつながる」(セブン−イレブン)との期待もある。
SNSやブログを使ったマーケティングに詳しい野村総合研究所技術調査部の亀津敦主任研究員は「まだ実験的な領域だが、客層を絞った広告ができ、販促にユーザーを巻き込めるのが利点」と話す。特にパソコンなど高価で複雑な製品や、化粧品など使うまで効果が分からない製品に向いているという。ミクシィは今月20日、ユーザー数が1000万人を超えた。コンビニ各社とも今後、無視できない広告媒体になりそうだ。