サメの歯のペンダントに白革の手袋…吉田栄作が盗賊団のボス、メッキー・メッサーにふんするブレヒトの傑作「三文オペラ」が、9日から11日まで西宮市の兵庫県立芸術文化センター中ホールで上演される。舞台出演は2度目という吉田は「80年前に書かれた作品だが資本主義の矛盾を皮肉る内容で、今こそ演じる意味がある。役を通してメッセージを伝えたい」と意気込みを語る。
初演は1928年。ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトと作曲家クルト・ヴァイルのコンビが作り上げた音楽劇は、ロンドンの下町を舞台に社会の底辺でうごめく人々のエネルギッシュな生きざまをダイナミックに描いて当時のブルジョア社会を風刺し、大きな反響を呼んだ。
「マック・ザ・ナイフ」をはじめとするクルト・ヴァイルの個性的な音楽ともあいまって、その後も世界各国で上演を繰り返している。
「すごく普遍性がある作品」と吉田は力を込める。「僕が演じるメッキーの反抗的なファッションだって、その辺を歩いているモヒカン刈りの兄ちゃんと一緒じゃないかな。ただ、80年前の作品をそのまま上演してもきちんと伝わらない。翻訳、演出、演技…いろんな仕掛けが必要だった」
演出の白井晃と話し合って、設定をどこともしれぬアジアの下町に移し替え、猥雑で混沌とした劇世界を再現した。
メッキーは街で見初めたポリーと結婚するが、彼女はメッキーと対立する貧民街の総元締・ピーチャムの一人娘。怒ったピーチャムは娼婦たちをそそのかし、メッキーを逮捕させようとする。気づいたメッキーは逃げ出したが、昔の情婦ジェニーの裏切りによって警察に捕まってしまい…。
吉田は悪のヒーロー、メッキーを「愛情に飢えている男」と分析。「きっと彼は16歳ぐらいでドロップアウトして、『あしたのジョー』の矢吹ジョーのように凍えているときにジェニーに助けられたんだと思う。盗賊だけど自分の手で人を傷つけられないピュアな心と、隠しきれない品を持っているような気がする」
テレビドラマなどでさわやかな二枚目として活躍した吉田。3年間のアメリカ留学を経て、舞台にも活動の幅を広げている。「アメリカに行って、日本の素晴らしさがわかった。これからも自分の歩き方で階段を一歩ずつ上っていきたい」
共演は篠原ともえ、大谷亮介、銀粉蝶、ROLLYら。問い合わせは芸術文化センターチケットオフィスTEL0798・68・0255。