おいしいけれど、重くて高カロリー…。そんな理由でフランス料理から遠ざかっている人も多いのではないだろうか。ホテルの華ともいうべきフレンチレストランが、野菜をたっぷり使い、和食の手法を取り入れたり、バターや塩を極力抑えたりと、知恵もカロリーも絞った“ヘルシーフレンチ”。今やフランス料理は健康にいいと人気を取り戻しつつある。
 |
バターを使わない「エアシップ」のライトフレンチ「食して健康」コース=ホテル大阪ベイタワー |
栄養バランス考慮
カロリーは普通のフルコースの半分以下というメニューが、今月から東京プリンスホテル(東京都港区)の「仏蘭西料理 ボーセジュール」のランチタイムにお目見えし、話題を呼んでいる。
男女それぞれのコースがあり、総カロリーは男性用で約650キロカロリー、女性は料理の選択により約460〜600キロカロリー。ちなみに、一般的なフレンチのフルコースは約1500キロカロリーといわれており、ランチとはいえ、その低さは目を見張る。
材料には野菜をふんだんに使い、調理法も一工夫している。女性コースの一品「鱈(たら)の蒸し焼き 秋野菜満載のスープ仕立て」を例に出すと、鱈は昆布じめにしてから蒸し焼きにするという和食の手法を使い、さっぱりと仕上げている。さらに、きのこや緑黄色野菜など約10種類の野菜を組み合わせている。
野菜不足を解消できるのも魅力で、女性コースでは、厚労省が推奨する1日分の野菜摂取量にあたる350グラム、男性用でも3分の2にあたる約230グラムがとれるという。
また三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の栄養バランスまで考慮する徹底ぶりだ。
管理栄養士と一緒にメニュー開発に挑んだシェフの佐野克志さんは、「難題が多く、約4カ月も試行錯誤を繰り返しました。おかげで私自身、4キロやせました」。くしくも自分のメタボ対策になったと笑う。
バターにさよなら
一方、ホテル大阪ベイタワー(大阪市港区)のスカイラウンジ「エアシップ」では、バターや塩を極力抑えた“ライトフレンチ”が人気だ。
昨年9月のリニューアルオープンを機に、40〜50代をメーンターゲットに、健康や美容を意識したコースメニューを打ち出したところ、リピーターがぐんと増えた。
全体的にあっさりとした味わいが特徴で、秋のメニューの「シャンピニョン(マッシュルーム)のクリーミースープ」は、バターを使わずに7種類のきのこで味に深みを出している。ひとさじ、ひとさじ味わうごとに感じる、しみじみとしたおいしさは、どこか和食に通じる。
山本健調理長は、「新鮮な食材にこだわり、そのうまみを生かした料理を心掛けています。食べ飽きず、またすぐに食べたくなるすしのようにフレンチを楽しんでいただけたら」と話す。
蒸したり、網焼きにしたりすることで脂肪を落とす調理法、スパイスや酸味を利用して減塩の物足りなさをうまく補う方法は、家庭でもすぐに取り入れられそうだ。