デジタルカメラの市場拡大が止まらない。主要8社による平成19年9月中間決算(キヤノンは1〜9月期)は、5社が期初計画比で通年の出荷目標を上方修正した。買い求めやすい価格のコンパクト型が海外で大きく伸び、国内でも高機能な機種への買い替え需要で好調を維持。年間出荷は8社で1億台の大台が射程に入った。
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今やデジカメは一眼レフの時代。電器店売り場も活況にわく=東京都千代田区のビックカメラ有楽町店 |
強気

出荷台数の期初計画からの上乗せ幅は、ソニーが200万台、キヤノンとニコンがそれぞれ100万台と、かなり強気だ。年末商戦に向けて新機種を投入するメーカーからは、「さらなる伸びも期待できそうだ」(ニコンの寺東一郎副社長)との声も飛び出す。
ソニーや松下電器産業など、電機メーカーの中間業績も好調なデジカメが牽引(けんいん)。「ほとんどの地域で出荷が拡大した」(ソニーの大根田伸行・最高財務責任者)といい、海外を中心にした販売増が目立った。
上方修正の増加分は5社合計で450万台にのぼり、目標出荷台数は9830万台となる。出荷台数は前年実績比で約24%増に伸びており、“デジカメ景気”はしぼみそうもない。
進化
軽量小型なコンパクト型デジカメは機能の進歩が著しい。人の顔にピントを合わせ、明るさを自動調節する「顔検出機能」の搭載機が増え、「買い替え需要の掘り起こしにつながった」(富士フイルム)。
笑顔に反応してシャッターを切ったり、斜めの顔も検出できる性能を打ち出すなど、メーカー間の競争も熱を帯びる。
一方、価格が10万円以下の初心者向けが登場して一気に市場が広がった一眼レフは、大手が相次ぎ15万円以上の中・上級機を投入。キヤノンは「上級機が販売台数を伸ばし、交換レンズも順調に推移した」(大沢正宏常務)といい、一眼レフのユーザー層の拡大が続いている。
落差
活況に沸くデジカメ市場だが、シェア(市場占有率)争いが激しくなる中で、製品価格の下落も進んでいる。各社にとっては、収益を左右する部品のコストダウンや、生産の効率化が重みを増している。
下落率が「上半期で7%ぐらい」というオリンパスは、「共通部品の拡大や材料調達の効率化」(山田秀雄専務)で利益率を向上させた。キヤノンやソニーは、自社生産するカメラの「眼」となる画像センサーで、製造設備に大型投資して生産規模の拡大に取り組む。
一方、HOYAに吸収合併されるペンタックスは、収益面で苦しむものの、「ペンタックスのブランドは残る。今後はHOYAの新しい視点を加え、さらにブランドを強くしていく」(谷島信彰社長)と、評価の高い一眼レフをテコに存在感をアピールしたい考えだ。