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ボツ2000枚、渾身の力作
乙一、「ジョジョ」を小説化 
2007/11/30 産経新聞  東京朝刊 by 舛田奈津子
単行本の売り上げがシリーズ累計7000万部を超える人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(原作・荒木飛呂彦、集英社)の第4部を若手人気作家の乙一(おついち)さんが小説化した『The Book〜jojo’S bizarre adventure 4th another day』が発売された。執筆開始から約5年。ボツ原稿が2000枚にものぼる渾身(こんしん)の1冊。独特のせりふや擬音、スタンドと呼ばれる超能力による決闘シーンなど、漫画の世界を繊細な文章で描き出している。()


「原作が強烈すぎて、意識してしまう。自分が書きたいものよりも、ジョジョのファンが喜ぶものを考える。うまく書けず、何度も書いてはボツにしました」。乙一さんはそう振り返る。

17歳のときに『夏と花火と私の死体』で鮮烈なデビューを果たした。しかし、次に何を書いたらいいのか、長い間迷っていた。ふらりと訪ねた集英社で『ジョジョ−』第3部に引き続き、第5部が小説化されることを知った。

「第4部は小説にしないんですか? もしも書く人がいなかったら、書かせていただけませんか」−。何気なく発した一言だった。

最初の3年半は書けずに悩んだという。登場人物が動き出さない。人形のようで重みが出ない。ファミリーレストランに居座り、思索した。写実的な描写を意識するより、想像力を刺激するあいまいさを大切にした。

完成した本は茶革の装丁。荒木さん書き下ろしのイラストが添えられている。東方仗助などおなじみの人物が登場し、原作の世界を踏襲しているが、最大の特徴は序盤から丁寧に描かれる人間ドラマにある。『ジョジョ−』の熱く激しい世界に、乙一作品ならではの、どこか切ない感覚が同居する。張りめぐらされた伏線は終盤に結束し、胸を打つ結末を迎える。

「血筋や親子のことを、時間的な広がりをもたせて書いてみたかった。憎しみや復讐(ふくしゅう)だけではなく、愛情も…」

今年29歳になった。書くべきことがないと追い詰められて書きはじめた1冊。20代の多くの時間をつぎ込んだ。この5年のうちに気鋭の作家と呼ばれるようになり、自身の作品が映画化された。結婚もした。

「完成後、ポッカリと心に空白ができた気もしましたが、今は“これからも書くべきことがあるんだ”という温かい気持ちがある。まぬけなものでも書いてみるか、という感じです」この物語は、一人の若者の成長の記録でもある。

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