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顧客争奪、試される販売力
「J・フロント」発足 百貨店4強時代に突入
  東京朝刊
百貨店業界は“4強”、すなわちJ・フロントリテイリング、三越伊勢丹ホールディングス、ミレアリテイリング(西武百貨店・そごう)、高島屋といった1兆円規模のグループがしのぎを削る時代に突入した。中でも、J・フロントと来年4月に誕生する三越伊勢丹は首都圏戦略などで真っ向からぶつかる。ショッピングセンターやネット通販など他業態との競争も激しくなる中、統合の相乗効果を発揮できるかどうかが生き残りのカギを握ることになる。

「社風の違いがないと言ったらうそになるが、非常にうまく行っている」。J・フロントの奥田務社長は会見で、統合の手応えを語った。

奥田社長が大丸で進めた改革は、売り場特性に合わせた人員配置の見直し。伝票処理などは派遣社員に任せ、社員が販売に専念できる態勢を作った。また、海外店舗の閉鎖や大胆な人員整理にも手を付け、営業利益率を業界で高水準の4・1%まで高めた。

今回の統合ではリストラには踏み込まない。そのかわり「最大の顧客満足を最小のコストで実現」を合言葉とする大丸の経営手法が、中部地域でのブランド力にかかわらず低迷する松坂屋HDに移植されることになる。実際、3日付で大丸神戸店店長が松坂屋名古屋店店長となるなど、奥田社長のリーダーシップが発揮され始めている。

一方、7カ月後には、J・フロントから業界首位の座を奪う三越伊勢丹。伊勢丹は売れ筋商品のサイズや量などを把握し、発注精度を高める仕組みに定評がある。カードを使った情報システムと合わせて高い利益率を実現。富裕層に顧客を持つ三越で活用できれば、大きな武器になる。

ただ、「プライドが高く保守的」(業界関係者)とされる三越で、どこまで伊勢丹流を徹底できるかどうか。ホールディングス会長に就任する武藤信一・伊勢丹社長の手腕が試される。

大丸も伊勢丹も統合で一時的に営業利益率は低下。それぞれ5%程度を当初目標にしているが、いかにスピードを持って実行できるかが重要だ。

その意味で、奥田社長が「人口減の中で数少ない成長マーケットであり、存在感を高めたい」と語る首都圏、特に全国の百貨店売上高の4分の1を占める東京での戦いが雌雄を決する。

J・フロントは平成24年に松坂屋銀座店を再開発する計画だが、先行して三越銀座店は22年度に改装予定。若者に支持される“ファッションの伊勢丹”のノウハウが取り入れられると見られ、東京で知名度の低い大丸は差別化が必要だ。利益率を上げてきた大丸だが、「販売力が試される」(証券アナリスト)。

また、首都圏では、日本橋や横浜などに1500億円以上の売上高の基幹店を持つ高島屋や、西武百貨店などのミレニアムとの競争も激化する。

奥田社長は「業態を超えた統合が起こっても不思議ではない」とさらなる再編に含みを残す。業界では、ターミナル駅という立地にかかわらず、収益力で見劣りする「電鉄系や地方百貨店が大手の傘下に入るのではないか」とささやかれる。いかにスピード感を持って相乗効果を出すか。グループ経営の成否が、今後の再編で主導権を握れるかを左右しそうだ。

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