米演出家ロバート・アラン・アッカーマン率いる演劇集団「the company」が本格的な活動を開始する。今年秋からの本公演を前に4日から、オフ・ブロードウェー・シリーズ第1弾「バーム・イン・ギリヤド」を日本初演。メンバーの1人、チョウ ソンハは「ある意味で演劇的事件」と話す。

「バーム−」は、ピュリツァー賞に輝く米劇作家ランフォード・ウィルソンの作品。マンハッタンの大衆食堂を舞台に、そこに集まるドラッグディーラーやジャンキー、娼婦、ギャングらを描く群像劇。30人の若手俳優が出演する。
「全員が孤独で寂しく、人とのつながりを求めて、ただそこにいる。一人ひとりの物語と、ある程度の筋はうっすらあるんですが、ストーリーの起承転結に固執しない脚本。演劇ならではのお約束ごとをとっぱらった混沌(こんとん)さもあり、攻める演劇です」とソンハ。
昨日と同じ笑い話、他愛のない無駄話、麻薬取引の駆け引きやかなわない夢物語…。社会の底辺で生きる人間たちが、あちらこちらで会話を交わす。
「会話が同時多発的で、セリフは音のように聞こえる。物語というより、寂しさや孤独の“風景”といった感じ。パワフルだけど意味のない会話にクラッとする観客もいるかも」
ただ、分かる人だけが分かるアートではなく、単にワケがわからない演劇でもないという。「その先に何があるかを投げかけ、世代ごとにそれを拾える余地のがある」
在日韓国人3世。法政大学を卒業後、北区つかこうへい劇団を経て、所属する演劇集団「ひょっとこ乱舞」での活動ほか数々の演出家の作品に出演し、作品ごとにまったく違う表情を見せる個性派として活躍中。今年はアッカーマンが監督を務めたハリウッド映画「ラーメン・ガール」も公開される。
「何の得にも商売にもならなくても、どんな場所でも正しく材料(経験)を集めて、のたうち回って、整理しながら、常に何か新しいものを取り入れる姿勢でいたいですね」
4月20日まで、東京・新宿シアターモリエール。(電)03・5465・1656。