MSN産経ニュース SANSPO.COM ZAKZAK iZA! FBi
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | MSN産経ニュース
厨房の排水を再利用/地中熱で電力を賄う
泊まるなら 地球に優しいホテル!
2008/4/3  産経新聞東京朝刊 by 中曽根聖子
地球温暖化問題への関心が高まるなか、環境に配慮したホテルや旅館が増えている。敷地内の水力発電や地中熱による自然エネルギーの利用、生ごみの100%リサイクル、温泉を使った暖房システムなどユニークな取り組みも目立つ。間もなく大型連休。旅先の宿には、地球に優しい施設を選んでみては?

東京都心にある「ホテルニューオータニ」(千代田区)。客室数1500、1日の利用者は平均約1万5000人。小さな町の人口にも匹敵する巨大ホテルの地下に、ふだんは決して目にすることのない厨房(ちゅうぼう)排水処理プラントがある。

ホテル内にある約50の厨房から流れ込む水は1日約1000トン。この施設で排水から油分などを分解して、トイレの洗浄水や庭園の散水に有効活用している。ホテル内には1日当たり5トンという膨大な生ごみを100%リサイクルする独自のコンポスト・プラントもあり、生ごみから作られた堆肥(たいひ)で栽培された野菜やコメの一部を購入する循環システムを実現した。 

ホテルでは昭和39年の開業以来、着々と環境対策を進めてきた。昨年10月に全面改装した本館には、高効率の大規模空調システムや断熱効果を高めたガラスなどを採用し、二酸化炭素の排出量を約3割削減した。

ホテルの環境事業を担当する子会社、エヌアールイーハピネスの杉本有司常務は「お客さまに不便を強いるような環境対策では意味がない。『サービスは2倍、エネルギー消費は半分』を目標に、ホテルの心地良さを味わっていただきながら、あらゆるものを再利用して最小限の環境負荷を目指す」と意気込む。

★ ★ ★

世界トップクラスのエコリゾートとして注目を集めているのが、長野県軽井沢町の温泉旅館「星のや軽井沢」。運営する星野リゾートは平成17年の改装に際し、日本では前例のない地中熱の利用システムを作り上げた。地下400メートルまで穴を掘り、地中を通るパイプに水を循環させて熱だけを取り出すシステムと、敷地内での水力発電を組み合わせ、消費エネルギーの約70%を自給する。

「浅間山麓(さんろく)の豊かな自然はホテルにとって大切な資源の一つ」とリゾートのエネルギー担当、松沢隆志さん。投資額は少なくないが、「美しい景観を維持することが、競争力と、お客さまの満足度を高めることにつながっている」。

環境対策を宿泊客誘致につなげようという動きも活発だ。長野県が昨年4月からスタートした「信州エコ“泊”覧会」は、環境に配慮した宿を県が登録し、ホームページ上で公開。現在は136施設が参加し、「地産地消」「湯たんぽサービス」などエコな取り組みを紹介する。

その一つ、渋温泉(山ノ内町)で250年の歴史をもつ老舗旅館「金具屋」は17年に、温泉の熱を利用した暖房システムを新設。夏はエアコンの温度を28度に設定し、午後11時には止めるという徹底ぶりだ。

灯油の使用量は以前の8分の1程度に減った。ところが、「暑くて眠れない」といった苦情も少なくない。8代目当主の西山政樹さんは「お客さまが求めるのは、おいしい料理や温泉、快適な部屋であり、環境に優しいことは施設を選ぶ基準にまだなっていないようだ」と嘆く。

ただ、ニューオータニではここ1、2年で「環境に優しいホテルだから」という理由で宿泊する外国人や、結婚披露宴を開く人が増えてきた。環境対策と快適性の両立という難しい課題への業界の挑戦は、始まったばかりだ。

携帯版SUMiRE STYLE スミレモバイル登場




産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
Copyright(C)2008 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです
携帯で読むSUMiRE STYLE