業界再編で売上高1兆円規模の4グループに集約された大手百貨店の平成20年2月期連結決算が14日、出そろった。個人所得の伸び悩みや株安を受け、各社とも衣料品や宝飾品が苦戦。経営統合によるコスト削減や子会社の好調で挽回(ばんかい)した高島屋など2グループが営業増益となる一方、三越伊勢丹ホールディングスなど2グループは減益となり、明暗を分けた。
大丸と松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングでは、大丸が9年ぶりの営業減益となったが、働き方の見直しなど統合を機に行ったコスト削減効果で松坂屋が大幅増益。グループでは増収増益となった。
J・フロントはこの日、向こう3年の経営計画を発表。22年度の人員を19年度より約1500人少ない約7800人にした。定年退職者の不補充などで、人件費を抑える。
奥田務社長は「新しい百貨店のビジネスモデル」を目指し、統合の果実を他グループに先駆けて手にする意欲を示す。
昨年の売上高首位から3位に転落した高島屋は得意の宝飾品などが低迷したが、ショッピングセンター運営子会社や海外店が好調で、営業増益を維持した。
一方、三越伊勢丹ホールディングスや、そごうと西武百貨店を抱えるミレニアムリテイリングは衣料品の在庫処分などで主力店の利益率が低下。食品の好調や改装効果で補えなかった。
規模拡大を進めてきた各社だが、専門店など他業態との競争も激しく、今後は販売力の真価が試される。
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統合効果か、単独改革か。三越伊勢丹ホールディングス、J・フロントリテイリング、ミレニアムリテイリングの3グループに、売上高トップを誇った高島屋を交えた百貨店業界の4強。規模、収益力、商品力をめぐり、勝ち残りを目指した戦いが始まった。
販管費をカット
「食品の売り上げが拡大する一方、婦人服は壊滅的で高額品も振るわない」
J・フロントリテイリングの奥田務社長はこの日の決算会見で、昨夏以降の景況感悪化を不振の理由に挙げた。ただ、J・フロントとしては増収増益。働き方の見直しなど統合後に大丸流改革を行った松坂屋が約18億円の販管費削減で大幅増益となったことが寄与し、統合効果を証明した。奥田社長は「予想以上に進んでいる」と話す。
問われる営業力
経営統合に走る他グループと一線を画し、単独で経営改革を進める高島屋。衣料品(前年比2・8%減)の低迷などで減収に見舞われた。ただ、今期は連結売上高、営業利益ともに過去最高を見込むなど強気だが、厳しい消費環境は続くとみられる。
今期からバイヤーを婦人服に重点配置するなど改革に着手しており、課題とする販売や商品調達など営業力の真価が試される。
池袋改装に命運
15年に西武百貨店とそごうが統合し、再編の先陣を切ったミレニアムリテイリング。20年2月期は約80億円を投じて改装した渋谷西武などが健闘したが、西武百貨店全体の営業利益の7割を稼ぎ出す池袋本店が低迷し、減益となった。
このため、22年秋を目標に進める池袋本店の改装が命運を握る。佐野和義社長は「西武を象徴する店を作りたい。あくまで顧客対象はすべて」と意気込む。
親会社のセブン&アイ・ホールディングスとの相乗効果も焦点だ。
伊勢丹も限界?
1日に始動した三越伊勢丹ホールディングス。課題は20年ぶりに売上高8000億円を割った三越の回復だ。日本橋本店などに伊勢丹が強みを持つ商品力を早期に導入する必要がある。
一方の伊勢丹は決算期は3月。増収増益を見込むが、新宿本店が3月に昨年7月以来の前年割れに。主力の婦人服が振るわなかったためで、他社から「さすがの伊勢丹も頭打ちか」との声も漏れる。
人材の派遣で三越再建に足を取られ、強い伊勢丹の力がそがれないか、統合の成否が問われるところだ。