お笑いコンビ、ココリコの田中直樹が初舞台に挑む。劇団ONEOR8(ワンオアエイト)の「莫逆(ばくぎゃく)の犬」(田村孝裕作・演出)。「けいこをすればするほど理解できることが増えていく」と燃えている。
恋人の部屋に住む一郎(田中)はもう何年も外に出ていない。実は一郎は過去に母親を殺していた。やがて部屋を訪れる人々に徐々に追いつめられ…。
「温厚で、けんかをしたことがない男。怒り方がわからず、カーッとなって殴ったのが致命傷になった。でも、反省してるのに自首はしない。そのあたりの微妙な心情がよく分かる展開です。切ない役なんですが、今までと違う自分が出せる感じで、けいこが楽しい」と田中。
主人公の葛藤(かっとう)を軸にした心理ミステリーの中に、人間たちのユーモラスな言動をちりばめた展開。
「心理劇というくくり方だけど、心境や環境、人と人とのかかわり具合がどんどん変わっていく。見た人が全員、元気になるような作品ではないけれど、かといって救いようがないわけではなく、後味が悪いわけでもない。細かい部分の感じ方、とらえ方が見た人それぞれ違うと思うので、どう思っていただけるか、感想を聞きたいですね」
ココリコとしてのバラエティー活動のほか、単独ではドラマや映画など役者として活躍中。監督や演出家の要求に応え、役を作っていく作業が楽しいという。
「コントの時は自分たちで決めますが、役者の仕事は客観的視点で演出されることが楽しい。今回は1カ月近くけいこをして10日間、本番という初体験。劇団が積み重ねてきたものを壊しちゃいけないというプレッシャーはずっとあって余裕はないんですが、自分の存在が力になれたらうれしい」
三谷幸喜監督「みんなのいえ」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。演技力には定評があるが、いたって謙虚な人だ。
「仕事に優劣はつけられないんですが、ゼロから始まって完成に向かっていく過程がすごく好き。もうすぐ37歳。20代のときよりは小さいレベルですが、変わってきていると思う。外での経験をココリコの活動に生かせるように、これからも変わっていけたら」
17日から27日まで、東京・新宿のシアタートップス。(電)0570・00・3337。