ワインボトルや車のシートベルトなどの廃棄物を、元の形や風合いを生かして再利用した海外の雑貨やファッションが相次いで紹介されている。中でも北欧デザインの一つ、フィンランド製品は人気が高い。個性的なデザインに加え、高い機能性も併せ持つのが特徴。リサイクル品の新たな魅力とともに、循環型社会の将来性を身近に感じることができる。
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使用済みのガラス瓶で作品を制作するユッカ・イソタロさん。ワインボトル(右)を3分割するとグラス、キャンドルホルダー、シュガーケース(左から)に |
ワインボトルの胴回りを使ったキャンドルホルダー、グラッパの瓶を逆さにした花器、ピクルスが入っていた瓶の底を用いたボウル…。会場に並ぶ約70点の作品はすべてガラス瓶からできている。説明がなければ、どれも使用済みと気づかないほど完成度が高い。
制作したのはフィンランドのデザイナー、ユッカ・イソタロさん。空き瓶を「素材」として注目し、1989年以来、制作を手掛けており、作品の一部は日本でも買うことができる。
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イソタロさんの手になる使用済みワインボトルを使ったスタンド照明=いずれも東京・西新宿のリビングデザインセンターOZONE |
イソタロさんは、首都ヘルシンキのレストランなどから出る、国内では再使用できない空き瓶を回収し、手作業で研磨。「原材料を溶かすよりもエネルギー消費量が抑えられる」と瓶の形を生かして独創的な作品に仕立てている。
現在、日本では初となる個展(6日まで)を開いている東京・西新宿のリビングデザインセンターOZONE(オゾン)は「大量生産され廃棄されたボトルに新たな生命を吹き込む作品はアートとデザインの域を超えて注目されている。リサイクルを新たな視点で考えるきっかけにしてほしい」という。
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フィンランドで女性が創業したメーカー「SECCO(セッコ)」は現在、タイヤチューブで作った財布、パソコンの回路基板を使ったアクセサリー、シートベルトを用いたバッグなど50〜60点のリサイクル品を製品化している。
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廃材となったパソコンのキーボードキーを使った携帯ストラップ(上)と、回路基板で作ったブローチ |
輸入総代理店、ピクニック(東京・駒場)の真島僚子さんは「流行に合わせて定期的に新製品を出すことはしません。廃棄物が手に入ってからデザイナーが開発を始めるからです」と説明。にもかかわらず、平成17年の輸入当初は約10店舗ほどだった日本での取扱店数は今や60店舗に拡大する人気ぶりで、インターネット販売も好調という。
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日本ではムーミンやオーロラで知られるフィンランドは、他の北欧諸国と同様に環境先進国。一方で、隣国のスウェーデンやロシアの支配を長く受け、スウェーデンやデンマークのように裕福な王室を持たず、またノルウェーのように資源が豊かではないという国情がある。
フィンランド大使館報道・文化担当参事官のセッポ・マキネンさんは「フィンランドは周辺国と比べ貧しかったので、国民は身の回りにあるものを生かして使う知恵を身につけてきた。現代のデザイナーが消費型社会に対する反発を表す手法として廃棄物を利用するのは歴史的背景からも必然といえ、こうした動きは広まっている」と語る。
その上で、「機能性とデザイン性の調和という点で、日本の美的感覚と共通性がある」とも。日本人の心をとらえる理由の一端といえそうだ。