俳優の上川隆也が28日から、所属する演劇集団キャラメルボックスの公演「きみがいた時間 ぼくのいく時間」(成井豊脚本・演出)に主演する。ホームグラウンドの作品に出演するのは3年ぶり。上川は「一劇団員に戻る時間であり、外で何を学んできたか試される時間でもある」と話す。
原作は「黄泉(よみ)がえり」などで知られる梶尾真治の小説。同劇団はこれまで梶尾の連作短編集「クロノス・ジョウンターの伝説」をもとにした3作を舞台化している。何かしら制約や欠陥があるタイムマシン、クロノス・ジョウンターが登場するSFファンタジーとして高い人気を得ている。今回はその“クロノス(時の神)シリーズ”最新作だ。
「キャラメルボックスのタイムトラベルものはぼくらから見ても成井豊の持ち味が発揮される作品だと思います。演劇としてどう立体化させ、ぼく自身、どう芝居を作って納得させるか、役者と演出家の勝負です」と上川。
ふんするのは主人公の秋沢里志。“39年前にしか戻れない新型タイムマシン”を使い、愛する女性(西山繭子)を助けるために奔走する姿を描く。
主人公の里志については、作者の梶尾が上川をモデルに書いたというエピソードがある。「思いこみの強そうな人」という上川への印象と記憶が主人公にブレンドされているらしい。
「うーん、意外です。原作を読んだときは里志の中に自分を見いださないまま読み終えましたし。思いこみの強いキャラかと言われると首を縦には振れませんが、思いの強い男と思うと腑に落ちますね(笑)」
今年で入団20年目。テレビや映画、外部の舞台出演が続く中で、久々の本拠地での仕事。
「枕詞(まくらことば)のように3年ぶりと言われますが…。どこにいても一人の役者として仕事をしているので、常に劇団の存在を感じているわけではないんです」
作品ごとに、さまざまなキャラクターを演じ分ける役者だ。今年も変わらず、1年の活動を振り返ったとき、たくさんの芝居をしたなぁと思えれば満足という。
「映像が一過性の醍醐(だいご)味だとしたら、舞台は反復と追求によって得られるトライ&エラーを何度もできる面白さがある。観客と空間を共有できる喜びも。お互いをよく理解しているメンバーと日々、感情や演技のキャッチボールができるのが楽しみ」
4月7日まで、東京・東池袋のサンシャイン劇場。TEL03・5342・0220。