世界最古のミュージカル「ベガーズ・オペラ」(ジョン・ケアード演出)が3月5日から東京・日生劇場で2年ぶりに再演される。女性にモテまくる“セクシーカリスマ”の主人公を演じる内野聖陽は「改めて作品がもつパワーを感じます。打倒、初演!! 体全部を使って暴れたい」と意欲を燃やしている。
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盗賊マクヒース(内野聖陽=中央)と2人の女性(島田歌穂=左、笹本玲奈=右)の三角関係も見どころの一つ |
「ベガーズ−」は1728年、英劇作家ジョン・ゲイが「庶民のためのオペラ」として初演した。主人公は色男の盗賊で、ベガー(乞食)たちが劇場で一夜限りのオペラを上演するという設定のもと、犯罪社会を舞台にした色と欲に満ちた物語が展開する。
内野がふんするのは盗賊マクヒース。盗品売買人の娘に愛をささやく一方で、悪徳看守の娘を妊娠させるなど、やりたい放題の遊び人だ。
「セクシーカリスマと言われるだけに無限大にパワフル。やっていることはひどいですが、どこかで人を幸せにするような男で、こういう風に生きられたら−とみんながその生き方にあこがれるのでは。出し惜しみしないマクヒースのよさを表現しつくしたい」と内野。
上流階級や悪徳政治家を皮肉った風刺劇で、イタリアオペラや神話をベースにした作品が主流だった当時のロンドン演劇界に衝撃を与えた。ブルジョア層からは酷評されたが、庶民は大喝采(かっさい)。独劇作家ブレヒトの代表作「三文オペラ」の原型にもなった。
日本初演では、「壊れかかった劇場のイメージで、演者と観客の壁をなくす」という演出家ケアードの意図で、舞台と客席を幕で仕切らず、ステージ上の一部にも客席を設け、演者と観客の一体感を演出。役者たちは客席の間を動き回って話しかけるなど“観客いじり”も話題になった。
「あちこちで何かが起こり、観客はぼーっと見ていられない。セリフ劇としてもいろいろな要素が入っており、一言でミュージカルと片付けるのはもったいない作品。ブロードウエーやウエストエンドの作品とは違った荒削りでざらざらした質感を楽しみにしていただきたいですね」
ドラマやミュージカルなど、所属する文学座以外の活動も精力的だ。昨年はNHK大河ドラマ「風林火山」の主演という大役を果たした。
「去年は異文化といえるジャンルと出合い、たくさんの刺激を受けた。そのもらったものに栄養を与えてどんな芽が出るか、自分に期待したいですね」
ほかに高嶋政宏、村井国夫、橋本さとし、近藤洋介、島田歌穂、笹本玲奈、森公美子らが出演。30日まで。(電)03・3201・7777。