産経Webへ戻る SANSPO.COM ZAKZAK iZA! FBi
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | MSN産経ニュース
「妻の愛人に会う」
キム・テシク監督に聞く 真実の愛とは
2008/4/18    産経新聞東京朝刊 by 戸津井康之
キム・テシク監督 「自分の作品が“反韓流”と呼ばれるのはうれしい」。韓国のアート系映画「妻の愛人に会う」を撮ったキム・テシク監督はニヤリと笑った。不倫をテーマに真実の愛を探ろうとアプローチする意欲作。キム監督の世界観にスター俳優や甘いロマンチックな設定が入り込む余地はない。決してシネコンにかかるような映画ではないが、世界の映画祭は高く評価した。来日したキム監督、主演の性格俳優パク・クァンジョンに聞いた。

《江原道の小さな田舎町でハンコ店を営むテハン(クァンジョン)は妻の浮気に気づく。妻の相手はソウルのタクシー運転手、ジュンシク(チョン・ボソク)らしい。ある日、テハンは客としてジュンシクのタクシーに乗り込む。行き先は江原道。ジュンシクは運良く長距離客を乗せたと思ったのだが…》

キム監督が7年間、構想を温めた脚本は韓国映画振興委員会に認められ制作支援金を受けるが、完成まで苦労は続く。

不倫相手と一台の車の中で過ごすうちに奇妙な友情が芽生える−。キム監督の考えた展開に周囲は猛反発した。「リアルさがない。憎い相手は殺すはずだ」が理由だ。が、彼はこう反論する。

「もしこの周囲の考えの方がリアルだと言うのなら、世の中の人口はかなり減っているはず。みんな映画の見過ぎですよ」

不倫相手は憎いが、長距離運転で疲れた運転手を見ると、つい代わりにハンドルを握る気弱で優しい主人公をパクが好演。シリアスなテーマに緊張感漂うが、コミカルなテハンたちの行動に思わず笑みもこぼれる。「一生懸命な行為ほど外から眺めると滑稽に見えるでしょ」。鋭い洞察眼で人間の内面をえぐるように切り込んでいく。

「人気者のペ・ヨンジュンさんが主人公じゃないから、この作品はシネコンで上映しないのですよ」。冗談を言う主演のパクは俳優兼舞台演出家。韓国では有名な演劇人だ。「映画で問われるのは社会に向けて何を発言し、発信できるか。大作かアート系かは関係ありません」と訴える。

「愛を壊すのは嫉妬という愛。壊れた愛を修復するのもまた愛です」。多くの“不倫もの”と一線を画す理由はこんなキム監督の哲学に裏打ちされているからだろう。

19日から東京・渋谷シアター・イメージフォーラムで公開。

産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
2007(C)SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです

淀川長治の銀幕旅行