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「チェスト!」主演作に音楽も
松下奈緒 “マルチな才能”全開
2008/4/28    産経新聞東京朝刊 by 戸津井康之
自分の出演作の主題歌を歌う女優は珍しくないが、映画の劇中に流れる音楽すべての作曲を手掛けた女優となるとそうはいない。

松下奈緒 “サントラ(サウンドトラック)”と呼ばれる映画音楽の作曲を担当することは2年前に映画「アジアンタムブルー」で初めて主演したときからの悲願だった。だから、新作「チェスト!」への思い入れはこれまでの出演作の中でも特に強いという。

「試写では芝居でドキドキ。音楽でもドキドキ。スクリーンのエンドロールで『音楽 松下奈緒』の文字が流れた瞬間は感激しました」

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音楽も担当した松下が女優として「チェスト!」で演じたのは小学校の“マドンナ先生”の役。

《舞台は鹿児島。桜島と対岸の約4キロを泳いでわたる小学校伝統の遠泳大会が今年も近づいていた。6年の隼人(高橋賢人)は、これまで仮病などで大会を “ずる休み”してきた。担任教諭の白石奈津子(松下)は、小学校最後の大会となる今回、何としても隼人を参加させたかった…》

昨年夏、鹿児島県で長期ロケが行われ、児童役の地元の子供たち約100人が集まった。「子供たちは誰も私のことを女優として見てくれなかったんですよ」。そこで、「子供たちとは先生の立場で接しようと決めました。現場では“ナッチ先生”と呼ばれていましたからね」と笑う。

撮影前、東京のスタジオにこもって計30〜40曲を仕上げた。が、いざ鹿児島の現場に入ると東京で制作した楽曲のイメージは一変したという。真っ青な空と海。桜島の壮大さ…。元気あふれる子供たちと毎日、触れ合うことで部屋の中で作り上げたイメージは崩れ去り、新たなイメージが生まれ、具体化していったという。

「この心情表現はフルートで、ここはピアノで…というように大自然のなかで一生懸命に泳ぐ子供たちの生き生きとした表情を間近に見ることでダイナミックなアレンジが鮮明に浮かびあがりました」

完成した映画を見たとき、今回はこれまでと違う見方をしている自分に気づいた。

「自分の演技の確認は当然しますが、子供たちの演技を自分の音楽がダメにしていないかがとても気がかりで。今回は音楽担当としての目でずっと映像を追っていました」

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3歳でピアノを始め、音大に進学する。が、「ずっと女優にあこがれていた」。その夢は学生時代にテレビドラマで実現。以来、女優としてのキャリアを積み映画の主演作は早くも5本になる。ただし「音楽は一生続けていきたい」といい、卒業後もクラシックの勉強とピアノのレッスンを欠かさず、ライブ公演も定期的に開いてきた。

“マルチの才能”を開花させているが、「撮影現場では演技に100パーセント、レコーディングの時は演奏に100パーセント自分の力を出し切っています。片方に50パーセントずつ使うという器用なことは私にはできそうにないですね」。本作のように、女優と音楽を担当し一度に200パーセントの力を出し切ると相当、疲れるのでは−。

「2倍しんどいけど、その分、2倍の充実感があるんですよ」。説得力あるナッチ先生の笑顔がはじけた。

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まつした・なお 昭和60年、兵庫県生まれ。平成12年、高校生でモデルとなり、CMなどに出演。東京音楽大学へ進学し、在学中にテレビドラマ「仔犬のワルツ」(16年)で女優デビュー。19年の映画「ピアノの森」の主題歌「Moonshine〜月あかり〜」で歌手デビューも果たす。公開中の「チェスト!」では音楽と主題歌も担当。作曲やピアノ公演など音楽活動も展開している。

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