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伝説の海獣と少年の交流
映画「ウォーター・ホース」ジェイ・ラッセル監督に聞く
2008/2/1 産経新聞    東京朝刊 by 岡田敏一
ケルト伝説に残る海獣とスコットランドの少年との交流を描く米ファンタジー大作「ウォーター・ホース」(公開中)。監督のジェイ・ラッセルはドキュメンタリーで実績を重ねただけあって、子供向けの甘い作風を拒否し多様な人間ドラマも盛り込んだ。「主人公の少年が父の死と向き合い、精神的に成長を遂げるメタファー(隠喩)的物語でもある」という。

拾った卵から生まれた海獣は、瞬く間に大きく育って…
拾った卵から生まれた海獣は、瞬く間に大きく育って…

ジェイ・ラッセル監督 舞台は風光明媚(めいび)なスコットランド。第二次世界大戦で戦地に赴(おもむ)いた父の帰りを待ちわびる孤独な少年アンガス(アレックス・エテル)はある日、ネス湖で青く光る不思議な卵を見つけ、自宅に持ち帰るが、そこから生まれたのは世界に一匹しかいないという海獣「ウォーター・ホース」だった。

アンガスは海獣を「クルーソー」と名付け、母(エミリー・ワトソン)や姉に内証で飼い始めるのだが、海獣は予想以上の速度で成長し…。

原案は、子ブタが主人公のヒット映画「ベイブ」(1995年)の原作で知られる英のベストセラー作家ディック・キング=スミスの小説。ネス湖の幻の生物ネッシーを撮影したとされる有名な写真が実は捏造(ねつぞう)だったことは有名だが、果たして“ネッシーの存在まで否定すべきなのか?”という疑問から生まれた物語だ。

映画化にあたっては「クルーソーの成長とアンガスの成長を対比させると同時に、アンガスが父の死を受け入れ、精神的に成長を遂げる美しいメタファーとしても機能する物語」に仕立て上げた。

とはいえ撮影は一筋縄ではいかなかった。「メーンのキャラクター(クルーソー)がセットにいない」という悪条件。これを解決したのが「ロード・オブ・ザ・リング」3部作などの特殊撮影を手がけたニュージーランドの特撮工房ウェタ・デジタルなのだが「綿密な協議を重ねつつ良好な関係を築くため、撮影期間を中心に計約2年間、ニュージーランドに住んだんだ」。

「マイ・ドッグ・スキップ」(2000年)などで映画監督として成功する前は、米ディスカバリー・チャンネルのネイチャー系ドキュメンタリー番組のシリーズで実績を積んで高く評価された監督だけに、現地に住み、対象とじっくり向き合う手法はお手のもの。彼の熱意に答えるべくウェタも驚きの最新技術で期待通りのクルーソーを造り上げた。

首にしがみつくアンガスを楽しませるがごとく、ネス湖で激しいダイブやジャンプを繰り返すクルーソー。美しい大自然をバックに展開されるこの場面は驚異的だ。監督は特殊撮影のタネを懇切丁寧に明かしてくれたが、ここでそれをバラすような無粋なまねはするまい。それはネッシーを潜水艦で探索するようなものだから…。

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