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実在の有名ファッション誌の編集長の物語
映画「潜水服は蝶の夢を見る」 瞬きで生きる希望
2008/2/8 産経新聞    東京朝刊 by 岡田敏一
9日公開の米仏合作映画「潜水服は蝶の夢を見る」(ジュリアン・シュナーベル監督)は、脳梗塞(こうそく)で全身の自由を奪われながらも、言語療法士と左目の瞬(まばた)きでコミュニケーションを交わし自伝を書き上げた有名ファッション誌の編集長の物語だ。実話が題材のうえ、カメラアングルの斬新(ざんしん)さから米ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞を受賞するなど各国で高く評価されている。

力強い人間賛歌と斬新(ざんしん)なカメラアングルが魅力の「潜水服は蝶の夢を見る」
力強い人間賛歌と斬新(ざんしん)なカメラアングルが魅力の「潜水服は蝶の夢を見る」

主人公はフランス版「ELLE(エル)」の名編集長ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)だ。3人の子持ちだが、着道楽で美食家で女性関係も派手と人生を謳歌(おうか)し過ぎたツケからか、42歳の時に脳梗塞で倒れ全身が麻痺(まひ)する「ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)」に。

潜水服を着たように重い体で残酷な現実に押しつぶされそうになる彼だが、美人の言語療法士のアンリエット(マリ・ジョゼ・クローズ)は彼の左目の瞬きで互いにコミュニケーションする方法を編み出す。「死にたい」と訴える彼だが、瞬きと記憶と想像力で蝶のように飛翔(ひしょう)し生きる希望を見いだす…。

同名原作本の映画化だが、絶望のどん底にありながら、アンリエットに欲情するなど、フランス人ならではのセンスを感じさせる。有名な画家だったシュナーベル監督の手腕と、アカデミー賞撮影賞受賞で知られるヤヌス・カミンスキーのジャンの左目になり切ったカメラアングルは映画ファンなら必見だ。

せりふこそ仏語だがテンポのよさは欧州映画というよりハリウッドの娯楽大作に近い。それもある意味当然だろう。カミンスキーをはじめ、ボビー役のマチューやアンリエット役のマリ、大物プロデューサーのキャスリーン・ケネディなど、主要製作者やキャストはスティーブン・スピルバーグ監督と縁の深い人々。いわば“スピルバーグ組”が仏を舞台に製作した作品なのだから。本作がゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞を受賞するというのも不思議な感じだ。今年度アカデミー賞で4部門の候補にもなっている。

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