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日系カナダ人青年、人間性を取り戻す
映画「窯焚−KAMATAKI−」日本の美、リアルに追究
2008/2/22 産経新聞   東京朝刊 by 岡田敏一
父の死で生きる希望を失った日系カナダ人が、信楽焼で知られる滋賀県甲賀市の信楽町に住む叔父を訪ね、陶芸を学びながら人間性を取り戻してゆく物語「窯焚−KAMATAKI−」(カナダ・日本合作、23日公開)。監督・脚本はカナダ生まれで日本での映画監督経験もあるクロード・ガニオン。「日本人の生活習慣やものの考え方を通して、日本固有の美意識を伝えたかった」と話している。

モントリオール世界映画祭で5冠を達成した「窯焚−KAMATAKI−」
モントリオール世界映画祭で5冠を達成した「窯焚−KAMATAKI−」

日系カナダ人、ケン(マット・スマイリー)は父の死後、生けるしかばねのような日々を送っていたが、母のはからいで日本に住む叔父、琢磨(藤竜也)の元を訪れる。

琢磨は信楽町に住む有名な陶芸家だが、酒好き、女好きで“師匠”と呼ぶには少々くだけた感じ。ケンはそんな琢磨の家に居候(いそうろう)し、琢磨の妻、みを(渡辺奈穂)や、米からの留学生リタ(リーソル・ウィルカーソン)、琢磨の亡き師匠の妻、刈谷先生(吉行和子)らと心を通わせながら、10日間に及ぶ厳しい作業「窯焚」に挑む…。

ガニオン監督は1970年代を日本で過ごし、79年にATG配給の「Keiko」で長編デビュー。女性の自由のあり方を問うこの作品で、外国人としては初めて日本監督協会新人賞を受賞するなどユニークな経歴の持ち主で知られる。

それだけに日本文化への精通ぶりは相当なもので、「異文化と接することで自国の新しい一面や、これまで気づかなかった美しさを再発見してもらいたいと思った」と語る。

撮影場所である信楽町の豊かな自然を日本人の視点と西洋人の感性によって絶妙に切り取り、性的暗喩(あんゆ)を効果的に挿入しながら邦画でも洋画でもない唯一無二の美意識に貫かれた映像を作り出した監督の手腕は見事。

もともと陶芸が趣味という藤がわざとブロークン・イングリッシュを操り、おおらかで人間味あふれる琢磨を熱演。吉行も妖(あや)しげで摩訶(まか)不思議な存在感をかもしている。この2人がスマイリーをがっちり支える。2005年の第29回モントリオール世界映画祭で史上初の5冠を達成したのもうなずける。

「クライマックスの窯焚の場面を含め、リアリティーの追究に最も力を入れた。大阪が舞台の『ブラック・レイン』(1989年)のように、西洋人が頭で考える東洋人的な演技やエキゾチックな演出は徹底的に排除しました。藤も吉行も私の意図をすぐに理解したよ」とガニオン監督は話している。

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