前作から10年、あの「ビーン」が帰ってきた。長編映画第2弾「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(19日公開、スティーヴ・ベンデラック監督)は、おなじみのローワン・アトキンソン演じるコミカルな主人公が、映画祭でにぎわう南仏カンヌに繰り出し、珍騒動を巻き起こす。アトキンソンは「無声映画のコメディーにオマージュをささげた作品なんだ」と話している。
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10年ぶりに帰ってきたMr.ビーン。今度はカンヌを大混乱に |
前作は日本公開当時(98年春)、NHKがテレビ版を再放送したこともあって話題を集めた。今作のビーンも10年間のブランクを感じさせないハチャメチャな暴れっぷりで楽しませる。
教会のくじ引きで1週間のカンヌ旅行とビデオカメラという1等賞を見事、獲得したビーン(アトキンソン)。手に入れたばかりのビデオカメラで道中の模様を大喜びで撮影する。
ところが、あるトラブルから、カンヌ国際映画祭の審査員として現地へ向かう露の映画監督の10歳の息子と旅をする羽目に。父はビーンを誘拐犯だと思い込み、警察に通報。大がかりな捜索が始まった…。
「前作と違って、物語を視覚的要素(絵)で展開することにウエートを置いたんだ。挑戦だったけど、監督のベンデラックら初めて組む人たちとの仕事もうまくいったよ」と振り返る。
もともとテレビ版ではせりふをしゃべらないビーンが前作で言葉を話し、ファンを驚かせたが、本作では原点に戻り、せりふは「ウイ」と「ノン」と、なぜかスペイン語の「グラシアス」だけ。とはいえ、英語しか話せないビーンが仏で四苦八苦するという設定なので不自然さは感じない。
「前作ではしゃべりすぎた」(アトキンソン)との反省を踏まえての試みだが、表情の変化とコミカルな動作だけで進む物語。チャプリンの無声映画を想起させるが−。
「チャプリンよりジャック・タチ(仏の有名な喜劇役者兼映画監督)の影響を強く受けているよ。サイクリストの集団を、僕がひょうきんに追い越す場面は、彼の主演作『新のんき大将』(49年)から拝借したものだしね」と笑う。
無声映画時代ならいざ知らず、根気のない観客を相手に、テレビドラマと違って長丁場の映画をせりふなしで持たせることができるのか疑問だったが、そんな心配は無用。予想外の大団円に至る終盤の展開は楽しい驚きに満ちている。
「ビーンは僕が約30年かけて育ててきたキャラクター。大きな成功とさまざまな示唆を与えてくれたよ。でも、ビーンのイメージが強過ぎるため、他の役を演じる上で問題を引き起こしているのも確かだね」
彼はそう話すが、にわかには信じられなかった。目の前の礼儀正しく物静かな英国紳士には、「Mr.ビーン」のイメージなんてみじんも感じられなかったのだが…。