産経Webへ戻る SANSPO.COM ZAKZAK iZA! FBi
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | MSN産経ニュース
「知らない人々に伝えたい」
映画「サラエボの花」ジュバニッチ監督に聞く
2008/1/11 産経新聞    大阪夕刊 by 福本剛
ボスニア紛争で心に傷を負った女性らのその後を描いた人間ドラマ「サラエボの花」。一見平穏に見える人々に刻まれた深い傷があらわになったときの衝撃と怒り、そして、それでも懸命に生きていく彼女らの姿は感動的だ。「これは愛についての物語」というヤスミラ・ジュバニッチ監督は「サラエボの小さな場所で起こった出来事を、知らない人々に伝えたかった」と話す。

エスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ、右)は娘とともに一見平穏な日々を送っていたが…
エスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ、右)は娘とともに一見平穏な日々を送っていたが…

≪エスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ)は12歳の娘サラと2人暮らし。サラの楽しみは近づく修学旅行だが、なぜかエスマは旅費のため金策に走る。サラの父親は戦死し、遺児は旅費が免除されるのだが、エスマは証明書を取ろうとしない。サラはいらだち、母親を問い詰めるのだが…≫

過去を隠してきたエスマが、さまざまな葛藤(かっとう)から真実を口走る場面には思わず息をのむ。彼女らにとって戦争の傷は生きている限り続くのだ。それらに対し、ジュバニッチは暴力や戦闘シーンは使わず、「表面的な日常を見せることで、裏の悲しみなどを浮かび上がらせた」という。

そこで、大切になるのが母娘の人物像。特に、エスマ役のカラノヴィッチはセルビア人で、ボスニアの女性を演じたことが物議を醸した。だが、ジュバニッチは「彼女は映画に集中し、1人の女性の感情をどう表していくかにこだわっていた」とし、「戦争を経て自分が何者か見失った母娘がアイデンティティーを見つけていく姿を描こうとし、彼女らが体現してくれた」と振り返った。

ボスニアでの撮影にこだわったのも、ドキュメンタリー出身の監督らしい。「場所は大事な要素。そのエネルギーが役者や空間、時間にきっと作用する」。そして、「原題の『グルバヴィッツァ』も、戦争で多くの被害を受けたサラエボのある場所のことで、その響きがエスマらが暮らす小宇宙や世界観を表していると思う」と語った。

大阪のシネ・リーブル梅田などで公開中。

産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
2007(C)SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです

淀川長治の銀幕旅行