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2005年度のアカデミー賞短編実写賞候補
映画「フローズン・タイム」 映像美究めた恋物語
2008/1/18 産経新聞    東京朝刊 by 岡田敏一
26日公開の英映画「フローズン・タイム」は、2005年度のアカデミー賞短編実写賞の候補となった作品の長編映画化だ。製作・監督・脚本を担当したショーン・エリスは、もともとファッションの分野で活躍する若手写真家だけに、時のうつろいや一瞬で消え去る美のはかなさをいかに効果的にカメラに収めるかに尽力したようだ。物語に若干の物足りなさが感じられるが、卓越した映像センスがそれを十分カバーしている。

写真家出身の監督らしい映像センスが光る「フローズン・タイム」
写真家出身の監督らしい映像センスが光る「フローズン・タイム」

美大に通うベン(ショーン・ビガースタッフ)は恋人のスージー(ミシェル・ライアン)と別れたばかり。自分から一方的に別れを告げたのに、ブチ切れる彼女の姿が脳裏に焼き付き未練たらたら。友人ショーン(ショーン・エヴァンス)に相談しても打開策はない。

やり直そうとスージーに連絡を取ると既に彼女には新しいボーイフレンドが。ショックで不眠症になるベン。眠れぬ夜をスーパー・マーケットの夜間スタッフの仕事に当てるが、ひどい不眠と仕事の退屈さから時間がゆっくり停止し始める…。

2001年に監督・脚本を担当した短編「レフト・ターン」続く第2弾が本作の元になった同名の短編(原題はキャッシュバック)だが、短編を無理やり引き延ばしたような印象はない。ヴォーグやハーパース・バザールといったファッション系雑誌で活躍した著名な写真家だけに、テレビや映画づくりが専門の映像作家とは異なる映像美へのこだわりが随所に感じられる。

とりわけ、時間が完全に停止した夜のスーパー・マーケットの店内にいる大勢の若い女性の衣服を脱がせ、マネキン人形のように微動だにしない彼女たちのあられもない姿をスケッチするベンの姿は、写真家であるエリス監督の実験精神と妄想の表れだ。

スケッチが終わり、女性たちの衣服を元通りにすると、再び、何事もなかったように時が流れ始める。動画と静止画の違いやそれぞれの特性を知り尽くした監督らしいアイデアだろう。

偶然、買い物に来ていたため、スケッチのモデルとなったシャロン(エミリア・フォックス)に心奪われるという展開もなかなかのもの。「戦場のピアニスト」(2002年)などでも光ったフォックスの存在感が増している。

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