産経Webへ戻る SANSPO.COM ZAKZAK iZA! FBi
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | MSN産経ニュース
銅メダリスト破天荒人生 
映画「子猫の涙」森岡利行監督に聞く
2008/1/24 産経新聞    東京朝刊 by 戸津井康之
メキシコ五輪(昭和43年)のボクシングバンタム級の銅メダリストで、4年前に他界した森岡栄治。破天荒で型破りだが周囲の人に愛されたその人生を、甥で映画監督の森岡利行が映画化した。構想13年の渾身(こんしん)作「子猫の涙」について、森岡監督が思いの丈を語った。


森岡利行監督
森岡利行監督
「人生はなるようにしかなれへん」

メダリストとなり、帰国直後は国民的ヒーローだったが、プロ転向後はぱっとせず、網膜剥離(はくり)で引退。その後、誰しも達成できない偉業を遂げながら4年前に、ひっそりと他界した叔父の口癖を、森岡監督は今も、忘れることができないという。

映画化を目指し、書きあげた脚本のイメージはボクシング映画の名作「レイジング・ブル」だった。人生の絶頂に上り詰めながら、一気に転落していくボクサーの悲劇に、間近で見ていた叔父の転落人生を重ねた。完成した脚本は映画関係者らに評価されるが、製作費の出資者は現れなかった。

「映像化が無理ならば…」と森岡は舞台化を決意。叔父とその長女との物語「路地裏の優しい猫」として公演。話題を呼んだが、その後も映画化への道を模索し続けた。 

ようやく実現した映画版は、栄治役にボクシング好きで実際にトレーニングも積んでいる武田真治、再婚する妻役には広末涼子、長女には藤本七海という異色のキャストを起用。舞台版ではなかった葬式の場面も映画では描くことにした。

晩年、叔父は生活に困り、警察に逮捕される。が、逮捕が“縁”で親しくなった刑事は栄治の人柄にひかれ、葬式にも列席。この刑事役には栄治の大学の後輩、“幻のモスクワオリンピック候補”だった元日本チャンピオン、赤井英和が自ら出演を買って出た。

「歳月が流れ、私自身が結婚、子供が生まれる中で、単に一人のボクサーの物語ではなく、娘の視点からボクサーである父を描く家族の物語へとストーリーは自然と変わっていきました」と森岡監督。

「完成まで長かったが結局、13年かかってよかったと思う。叔父の生きざまを納得のいく形で描き切ることができましたから」と満足げに話した。

26日から東京・新宿ガーデンシネマなど全国で公開。

産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
2007(C)SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved.

ここは記事のページです

淀川長治の銀幕旅行