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コーエン兄弟入魂のサスペンス
映画「ノーカントリー」斬新な映像とユーモア
2008/3/14 産経新聞    東京朝刊 by 岡田敏一
今年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門を獲得した異色作「ノーカントリー」(監督・脚本=コーエン兄弟)が15日から公開される。斬新な映像と、ねじれたユーモア感覚で知られるコーエン兄弟入魂のサスペンスとあって、映画ファンにはこたえられない内容に仕上がっている。

舞台は1980年代の米中西部テキサス州。ベトナム戦争の帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)は狩猟中に、多数の死体と乗り捨てられた小型トラックが散在する異様な事件現場に遭遇する。トラックの荷台には大量のヘロインと現金200万ドル入りのかばんが。モスは金を奪って逃亡の旅に出る。

ところが追っ手は無敵の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)を雇う。彼は現金が入ったかばんに仕込まれた発信器を手がかりにモスを追う。

ここ最近、軽妙なタッチの作品が続いていたコーエン兄弟だが、今回は本領発揮。デビュー作「ブラッド・シンプル」(84年)や「ファーゴ」(96年)のような、サスペンスとブラックユーモアのいりまじった独特の持ち味をいかんなく発揮している。

例えばシガーと雑貨屋の店主との不毛な会話。

「そろそろ閉店です」
「何時に」
「今です」
「だから何時に閉める?」
「普段は暗くなるころに」
「何時に寝るんだ」
「9時半ごろです」
「そのころまた来る」

この後、シガーがくしゃくしゃに丸めて捨てたナッツの空き袋がゆっくり伸びていく様子が超アップで映し出される。圧搾空気銃を手に迫るシガー役のバルデムの鬼気迫る演技(アカデミー賞助演男優賞受賞)も見ものだが、こうした偏執的なディテールも見逃せない。

原作はピュリツァー賞作家のコーマック・マッカーシーの同名小説。アカデミー賞の授賞式典での記者会見でコーエン兄弟は「(難解な)原作小説が訴えるテーマを小説以上に(分かりやすく)説明しようと試みた」と述べた。原題は「No Country For Old Men」(老人のための国はない)。事件を追う初老の保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)が、古きよき米国を懐かしむ語り部的存在としての役割を果たしている。

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