「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」など数々のSF大作を手掛けてきたローランド・エメリッヒ監督が、新作「紀元前1万年」(公開中)では人とマンモスが戦っていた石器時代を舞台に選んだ。これまでの未来型SFから一転、テーマをはるか太古にさかのぼらせたわけだが、「絶えず新しい世界観を観客に見せたいからね」と意に介さない。未来と過去を自由に行き来する発想の源とは? 来日したエメリッヒに聞いた。
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「紀元前1万年前」は、初期のSF作品「スターゲイト」に近い作品に位置づけていると話すエメリッヒ監督 |
遠い昔。大地ではマンモスが群れをなし、若いハンター、デレー(スティーブン・ストレイト)は狩りに明け暮れていた。ある日、他部族に村を襲われ、恋人を連れ去られたデレーは、復讐(ふくしゅう)を誓い、旅に出る…。
この物語の構想が浮かんだのは15年前。マンモス狩りのドキュメントを見たのがきっかけだった。
「観客に見せたい新たな世界観」として、エメリッヒは「誰も見たことのない1万年前の世界」を描きたいと思った。スクリーンに映し出される大自然、そこに生息するマンモスや恐鳥など大型生物の迫力ある描写は圧巻だ。
本人にとっても未知の創作への挑戦だった。「動物はすべてCGで製作し、逆に自然はすべて本物を撮ろうと決めました」
だが、人跡未踏の大自然を探す旅は困難を極めた。世界中を回り、ニュージーランドと南アフリカでようやく撮影地を探し出すことができた。
太古から時が止まったかのような雪山、砂漠、ジャングルの実写映像は、まるで作り込んだCG映像のような美しさだ。一方で最先端のCG技術で毛先まで繊細に再現したマンモスやサーべルタイガーの姿は、実物の生き物のような臨場感で見る者を驚かせる。現代人が誰一人見たことのない過去を映像化する作業は、実は誰も見たことのない未来の創作と限りなく似ていることを彼は証明したかったのかもしれない。
次作も気になるところだが、「今回、太古を描いたので、次作ではまた未来を描きたい」。ニヤリと笑いながら「実は2012年を描く新作を準備している。『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』と合わせたSF3部作の完結編を作る予定です」と明かす。
枯渇しない発想の源について聞くと、「とにかく映画作りが好きなんです」と即答し、こう続けた。「安易な続編の製作を拒否し、誰も作ったことのない自分だけのオリジナルにこだわり続けたい。いくら時間と労力がかかってもね」